CY TWOMBLY – FIFTY YEARS OF WORKS ON PAPER (夏の東京1)

収蔵品の中に1.2点あったり、展覧会の出品作のなかに見つけたり、画集を眺めたり、そんなふうにしか観ることのできなかったサイ・トゥオンブリーだったので、これは見逃せなかった原美術館の展覧会。欲を言えば作品量的にはもっと観たいーのだったが、作品選定は(生前)作家自身が行ったものだし、原美術館の空気感と相まって、満足できる内容だったと思う。

アメリカ抽象表現主義にはそうまで魅かれないけれど、この人はなんだかいいなと思っちゃう。なんでだろうね。線かなあ。うーん線ねえ。と観ているうち、これは見たことあるような線、な気がしてくる。Tがまだ形にならない絵を書き始めたときの絵。というか線の軌跡。というか手と腕の運動。というか紙と筆記具の一期一会。まだなにかを書こうという意思が全くないような、でもなにかを書きたいような。なにかである必要を考えることなく、引かれる線。

まあ、抽象表現は子供でも描けそうな絵、という比喩はよく使われるんだけど。

まさしくあの頃、描いて描いて紙が束になっていた、線をぐいぐいぐるぐる描いてお絵描きしていたTのあの絵。それを眺めて、んーこれはなかなかいいね、とかこれはもうちょっとつまんなくなったね、なんて言っていた母。

そんな1歳児の描く絵を、だれが今もって描けるだろうか。

でも「この線がいいよねー」なんていう感想も、ちょっと眉唾で、興醒めですね。

もうひとつの発見は、色が氾濫している後半の作品たち。これらは、2作品、4作品等、同じタイトルだったりシリーズだったりするものが組み合わされて展示されている。これ、距離を遠く離して観てみると、とても良かった。近い距離からだと筆のタッチや色の混ざり方に目線が引き摺られるのが、遠く眺めることで、なんだろうそこから詩情が滲み出てくるような。まあ、遠くはなれてみると、いい思い出になるようなもんかな。

また機会があったら、少しづつでも時間をかけて観ていきたいような、そんな作家でした。

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