モランディ展。東京ステーションギャラリーにて。
安心した気持ちで鑑賞できる展覧会。激しい色彩や、モチーフの斬新さや、これ見よがしな表現形式がないから?
机の上で、瓶や缶の向きを変えたりくっつけたり離したり。窓の板戸を開けたり閉めたり光を調節して。キャンバスの上で、描いたり消したり構成を考えながら。毎日毎日描き続ける。
そういう時間を追体験するように、同じような絵の前を歩いて行く。
妹が掃除をしようとすると、埃をはらうなという話。
映画界の人々が特に彼を慕い、アトリエを訪ね作品を購入した話。
アトリエ内にもの(作品に関するものだけでなく)をためこんで捨てられなかった話。
静かに仕事をさせてくれ、と言っていた話。
とっても内に籠っている人物像を彷彿とさせる逸話ばかりである。
でも生涯、描き続けられる世界を自分のアトリエに見いだし、その場所と時間とを濃密に生きたことを羨ましく思うのは、私だけではないと思う。
晩年のもう抽象になってしまった、ぼやぼやの作品を見て、ああ幸せな人生だ、と思ってしまった。
それにしても、埃がつもるとどのように物体の光の反射が変わるのか、拭き掃除をストップしてみたりしている。