設計の仕事を終え、無事に建物が立ち上がり、施主家族の生活が始まる。そこにいつも安堵感と共に、一抹の寂しさのようなものも感じるのは、設計の仕事に携わるものの常だと思う。あれこれと関わっていたものを、もうよそに手渡してしまったかんじ。もちろん、その家は最初から施主のものであり、設計側の所有物ではないのであるが、それはそれ、生み出したものへの愛着というのは、そう簡単には無くならない。でも、もうそこには一つの家族の濃密な生活が詰まっていくのであって、我々は時々そこにお邪魔させてもらうくらいのこと。たまに近くまで行けば、その家の前の道をわざわざ通ってみたり。何か問題箇所があったりして連絡があれば、久しぶりにお邪魔できるとほくそ笑んでみたり。
あまり問題がありすぎて、度々お邪魔するのはもっと問題だけど、設計の仕事が終わった後も、何かしら関係をもっていきたいと、遠慮がちに背中で語る設計者なのである。
それで、このK邸。
ここの庭づくりは、デザインも施工も植え込みも、インプレイスが中心になって、施主家族も交えて行った。その流れで、壁面にハンギングバスケットをつり下げているのであるが、これを年に2回(夏から秋用、冬から春用)継続して作らせてもらっている。つまり、この約束によって定期的にお邪魔できるのはとっても嬉しいことなのである。庭の方も時間がたってとてもいい感じになっている。家と庭は、やっぱりセットだと思うし、両方に関わることができてこれまた嬉しいのである。