芽吹きの爆発

植物の力で何がいちばんすごいと思うか、芽吹きでしょうねえ。
散歩途中にある老木を冬の間ずっと眺めていて、ある春の日、こんな芽吹きを目にすると、おおお、と驚くばかりです。年老いた身体から、赤ちゃんの指先がにょきにょき出てくるのは植物の生命力の賜物。

癖のようなもの

大阪を通ったついでに、国立国際美術館で開催されていた草間弥生展に行きました。「永遠の永遠の永遠」とタイトルのついた展覧会の内容は、2004年以降のシリーズもの二つと新作ポートレート、彫刻など。彼女の表現本能が何かとがっちり手を組んで世の中に知らしめしている、といった印象。メーク無しでエプロンして震える手で色を塗り込めていく一人のばーさんの癖のような「絵を描く」ことが、愛や魂や幻想や永遠をまとって展示される。確かに、画面構成や色の組み合わせはうまいなあと思うけど。アミューズメントされすぎてやしないだろうか。チューリップの部屋も、写真には写らないように撮っているのだけれど、ここで鑑賞者はみな写真をとるのである。撮影可能箇所が決められていて、そこではかならず携帯やら何やらでみな写真を撮る。すっごいパワフルなおばちゃんやねえ、なんて言いながら。やむにやまれぬ感ややるせなさのような草間弥生的煩悩は、すでに永遠の永遠の永遠の彼方に、昇華されてしまったのだろうか。

洋裁学校の椅子

友人がかつて通っていた洋裁学校が取り壊されることになり、使えるようなものがあれば持っていってください、ということで、いただいてきた椅子です。
生徒さんたちが座っていた椅子。ちょっと小さいサイズで、脚が細くて、なかなかよいかんじです。
そういえば、○○洋裁学校と看板のある、校舎のような洋館のような建物がどこのまちにも、存在していたような気がします。洋服を着るようになった時代、既製服ではなくオーダーで誂えていた時代。そして自分で洋服をつくるというのが、あっという間に浸透して、花嫁修業のひとつ、女性が持っているとよろしいこととされる技術として、洋裁学校は賑わっていたのだと思います。近所の年頃の女性は皆、そこに通ったと聞きました。
TVドラマの「カーネーション」のことを重ねたり、最近読んだ金井美恵子の「昔のミセス」(幻戯書房)も同じような時代だったり。女性たちが溌剌と生きていた、ひとつの時代の流れのようなものが、リアルに見えるようでした。

木皿泉の脚本

またドラマやってくれないかなー、と切望する脚本家。といっても最新作の「Q10」しか見てないけど、「すいか」「セクシーボイスアンドロボ」だって、見たらきっとはまっただろうと思うし。「Q10」は毎回泣いて見てました。言葉のいちいちが、涙腺のツボにおもいっきりヒットしてました。この夫婦、仕事どころじゃない人生のなかで、生きていること自体がまた仕事に直結しているので、次の仕事を心配しながら心待ちにしているのです。この本は、夫婦漫談風エッセイ。「二度寝で番茶」木皿泉 双葉社

植物関係

おすすめの植物関係の本。
「雑草と楽しむ庭づくり」ひきちガーデンサービス 築地書館
化学肥料や農薬を使わないような方向性の庭関係本はあまり見当たらない。ひきちさんは虫や雑草とうまくやっていこうと実践している庭師さんなので、参考になります。当たり前のように雑草をやっかいもの扱いにするより、グリーンなグランドカバーとして役に立ててられれば、その方がお互いに平和なはず。

「森のリース、森の恵み」横山美恵子 河出書房新社
写真が美しくて刺激される本。乾いた褐色の葉や色づいた実や立ち枯れた花や、忘れ去られて取り残されたように存在する植物の姿に、つい見入ってしまう時がある。みずみずしい緑や花色だけが植物の在り方ではない。自然のなかから材料を集め、その材料との出会いの風景を表現する。
今度、原っぱや河原や林に分け入って、採集してこようっと。