高橋アキの現在(いま)

三原市芸術文化センターポポロにて。

前から4列目の席だったので、高橋アキさんの佇まいがよく伝わってきて、まるで彼女のピアノの部屋で演奏を聞いているような心持ちでした。

透明で繊細なピアノの音色でサティが奏でられ、アキさんのドレスは、印象派の絵のような美しいブルーのロマンティックなこれぞフランス風だし、思う存分その匂い立つような波長のなかに浸っていたのだけど、ふと、私にとっては今この瞬間は特別なものだけど、彼女はいつもこの波長のもとに生きているのだと思い至る。その彼女のピアノの練習部屋でも、こういう音が流れ空気が振れているのだ。いつもこのレベルのなかで生きているのだ。

サティの楽譜に書かれている言葉を語りながら演奏したり(歌いながらでなくしゃべりながらの演奏)、ビートルズのゴールデン・スランバー(武満徹編)(これはCDでずっと聞いていた)、シューベルトの美しい曲。

あー、ピアノを堪能しました。

帰りに、購入したCDにサインしてもらい握手してもらったら、柔らかな手の指には絆創膏があって、ちょっと日常の高橋アキさんを感じました。

ポポロにも拍手。小さな街にこんなすてきなコンサートを企画する箱があるっていいなと思います。

 

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「赤瀬川原平 世の中は偶然に満ちている」

亡くなられたあとに発見された日記や手帖から、偶然や夢の記述を抽出し、松田哲夫氏によって編集されたもの。

老人力のあとは、偶然力か超偶然か偶然観察学か?

もし存命でいらしたら、偶然についての今後の展開もあったかもしれない。

つらつら読むうちに(人の日記ってつらつら読むってかんじじゃない?)私も偶然日記つけてみることにする。そうしてるうちに、赤瀬川さんのような偶然力がつくかもしれない。

しかし。本人にとっては偶然って心躍ることだけど、人の偶然話ってさして面白くないものよね。

 

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「職業としての小説家」

村上春樹本に関して語れるような文章力はないので、感想を書くつもりはないのです。

熱心な読者ではないですが、それでも時々気になって、手に取ります。

小説家としての覚悟を持って書き上げている長編小説よりも、エッセイ的なものにどうも魅かれます。

「走ることについて語るときに僕の語ること」「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」「小沢征爾さんと、音楽について話をする」そして「職業としての小説家」

このあたりが好きです。

とても整然と語られているのでするする読めてしまうのですが、それでも、もやもや感や抽象的なかたまりは胸の内に沸き起こります。わかりやすいこととわかりにくいことが同じくらいに出現する。

だから、ついまた読もうと思っちゃうのだろうな。

表紙の写真は、アラーキー。

安西水丸や佐々木マキやフジモトマサルや大橋歩、的じゃないじゃないハードボイルド感が!

 

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日めくり

この日めくり、三年目になります。

日々を大事に過ごしていってもらいたいという、受験を迎えた子供への親心というか老婆心がきっかけでした。2014年より使っています。がしかし「毎朝めくるのよ」なんて言っても、三日も続くことはなく、めくるのはこの私。

おかげさまでわたくしが、日々大事に過ごさせていただいております。

毎朝、トイレでぺらっとめくり(トイレにかけてあります)その昨日の紙の裏面に、本日のやるべきことなどをメモします。たよりない薄い紙ですが、その程度のメモには丁度良し。

金田一秀穂さん監修のことわざがひとつ載っていて、それを読むのもなかなか良し。

他の「日めくり」はどうかな、と次の年にチェックしてみましたが、字体、サイズ、これがやっぱりいちばん良し。ちなみに、GOOD DESIGNにもなってますね。

それで、この年末にも購入しました。2016年も、この厚みでやってきます。

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絵師

最近は、なんでもアーティストって呼ぶから、くくりが大きすぎてアートの世界も無限大だあと思うのであるが、この人たちについては、絵師って呼びたい。

安野光雅。(ひろしま美術館「安野光雅のふしぎな絵本展」2015.10.31-12.6)

あの「ふしぎなえ」は、安野氏のデビュー作なのであった。あらためて見ても、ふしぎ。そして原画は、美しい。印刷だと色が濃すぎてニュアンスが消えてしまうけど、水彩の絵具の色合いや細かな筆致がよくわかる。もう圧倒的な技術力だ。それに加えて、この豊かな空想力。汲んでも汲んでも尽きない表現の泉を、その身にお持ちなのだろう。

山口晃。(広島市現代美術館「俯瞰の世界図」2015.10.10-12.6)

これまた、縦横無尽な視点と、それを表現しうる技術力を持った絵師。ご本人のトークが催されたので、参加。ホワイトボードの前に立ち、マジックでつるつる何やら描きながらのトークは、抜群に面白かった。お笑い芸人としてでも稼げるのではと思うほど。文章も面白い人と知ってはいたが、ライブでこんなに人を引きつける話術も持っているとは‥。

頭脳が明晰で、高度な技術を持ち、独創性に溢れ、人々に愛されている。だからたくさんの仕事が望まれ、それに答える能力もある。

そうやって、時代を貫いて残っていくのだろうな。歴史上のこれまでの絵師たちのように。

Unknown

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