かつて文明が栄えたところは砂漠化しているところが多い。
人が農業から離れ密集して住むようになると燃料や製鉄、製陶でどんどん薪を使うようになる。再生するより消費が多いと生態系が変わり樹木が生えない荒地となる。ペルシャ王国やエジプト王国、古代ギリシャ、漢が栄えた跡は皆砂漠となっている。
幸い日本は梅雨(一時的に熱帯雨林になる)があるので、いやというほど雑草にも雑木にもやぶ蚊にも苦しめられるが非常に幸運な立地条件だと感謝したほうがいい。
そうした植物に恵まれない地域では、建材は土から取るしかない。
都市部は石灰岩や砂や砂利を使うコンクリートと鉄で鉄筋コンクリート構造で建築をつくることができるが、極端な農村部では相変わらず日干しレンガ(焼くための薪が無い)を使うことになる。
確かに濡れた土を型に填めて干すだけだから、非常に簡単だし、エコロジカルで二酸化炭素もほとんど発生しない。しかしこれは強烈に地震に弱い。
キアロスタミの「そして人生が続く」で描かれたように、村が全滅に近い打撃を受けることになるが、それでも日干しレンガで住宅をつくるしかない現実がある。
砂や石やコンクリートや日干しレンガは圧縮には強いが、引っ張りには弱い。つまり地震に弱い。
地震に強くするためには、引っ張りに強い材料、つまりなんらかの繊維質が必要となる。もちろん鉄筋でもいいが、生産と流通を考えれば、貨幣経済から遠く離れてしまった地域では現実的ではない。せいぜい学校や役所がつくれる程度。
繊維質つまりセルロースは植物の力を借りるしかないけど、雨が降らないし、生態系として建材ができる環境ではない。
完全に行き詰まっていた。
と思っていたら、賢い人がいた。
ポリプロピレンを使い、既存の日干しレンガによる建築の耐震性を飛躍的に向上させるという実験。
リサイクルでき、耐久性も強く、軽く安価。現地の技術を生かしながら、性能を上げることができる。
もちろん実験段階なので今後どうなるかわからないが、レンガの積層のシステムと同時に研究して欲しい。
どうやら地球は地震多発期に入ったようだから、速いにこしたことがない。
セメントと鉄筋でつくる補強コンクリートブロック造いわゆるブロック塀(建築もつくれるよ)をよりローテクに、より柔軟にアレンジするのかな。穴明きの日干しレンガの穴に梱包用テープを縦横に突っ込んで締め上げて、壁体をガチガチに固めてゆくことになるのか、、、
しかし粘土とポリでは相性が今一つなのでもう一つなじむような材料が必要だろう。
中国の西安からアテネまで行く間にずいぶんローテクな家を見た。いろんな連中がいろいろな家に住んでいたけど、まともに図面を描いて家を造るというものじゃない。日本もつい先日までそうだったように。
そこに伝わる技術との協調を考えるなら、マニュアルと材料を与えるという方法じゃ首都近郊にモデル住宅ができておしまいにしかならない。
消防署が持ってる地震を発生させる装置をプレゼントして、あんたら自分で考えなさいというのが一番早道かも。