宮島へ

今日から新型コロナウイルスに対する様々な規制を緩和して、新しい生活様式によってリスクをコントロールしながら、生活やビジネスを回復させるという段階にシフトすることになります。

先ずは近いところに行ってみることから始めることに。

久しぶりの宮島です。

建替が終わった新しいターミナルは、街路に大きな屋根を掛けて、ボックス状の建築を中に分散配置する形式。
コンビニ以外は閉店中でした。土産物店は完成して4日のみ営業した後に長期の休業に入ったようです。

朝早く出たので、船の中も島にもまだ人の姿は少ない。
落ち着いて神社や大願寺にお参りできます。

宮島口のうえのの穴子めしも、10分程度待つだけで席につけました。
外国人客以外は、まずまずの状況まで復帰しているようです。

ハマスホイとデンマーク絵画 展

新型コロナウイルスの蔓延による長い自粛生活から、次の新しい生活様式に移行するタイミングになったので、再開された山口県立美術館の「ハマスホイとデンマーク絵画」展に行ってきました。
居住するエリアで対象を絞り、当日に受付を行って整理券を配り、15人ずつのグループで決められた時間で展示室を移動するという方式を取ることで、三密を防ごうという試み。
うちを6時半に出て、作品鑑賞は10時10分から11時半まで。過剰と思えるほどの体制でしたが、丁度いい密度で作品を観ることができました。

1Fの展示室では、ハマスホイに影響を与えたであろう同時代の作家の作品。
繊細緻密であったり、光の表現が巧みであったりと大変興味深い内容でした。

2Fには、ハマスホイの作品が中心。人がいたとしても後ろ姿だったり。なにもない単なる「部屋」を描く作品も多数。
絵には主題や、それを描く対象があって、それが存在する空間は背景であったり、大道具だったりするのが常ですが。お芝居でいうと最初から最後まで役者が出てくることなく、背景だけを鑑賞するというものなので、当時の人は不思議だという認識だったようですね。

空間には必ず時間も一体になっています。時空間というもの。
観察者が空間に存在する時間と、その空間がかつて存在した時間というものもそこに含まれています。ハンスホイはそうした古い空間が大好きで、何度も古い魅力的な内装の住宅に引っ越して、絵の対象とします。
奥さんが長く入院し、退院した直後の目にくまのある疲れた表情の絵も、表情に込められてる人の経年の痕跡を描いています。
若くて綺麗な女性を描きたいという意識のない人だったと思います。

この展覧会は、山口県立美術館の学芸員が、欧州に留学中にハンスホイに出会って長く研究し、7年かけて企画してきたものです。
新型コロナウイルスの影響で東京展も、山口展も短縮化してしまったのですが、コアなファンのいる作家なので、鑑賞する側にとっても密度の濃い展覧会になったと思います。

「時をかける台北散歩」

6月29日、尾道の松翠園で、「時をかける台北散歩」というシンポジウムがありました。
台北で日本統治時代の建築を再生した「青田七六」を運営する水瓶子さんがゲストでした。
青田七六」は、旧台北帝大の教員用官舎で、戦後は台湾大学の官舎として使われていたもの。その庭付き一戸建ての建物をリノベーションして、様々な文化活動や、日式料理を提供する店としています。

台湾では日本統治時代の建築を再生する事が非常に盛んです。実際にその活動の中心的役割の人の話を聞くことができて面白かった。
聞き手の渡邉義孝さんは、著書を高雄の誠品書店で見かけていたので、本人の話も聞けたのもよかった。
異国の地で日本の古い建物を復元するのは大変労力がかかると同時に、コストも日本の何倍もかかります。日本と同じように建て替えるために解体する様々な圧力もかかると思います。
そうした苦難を乗り越えて、各地で誕生している再生された日式建築が現代の新しい文化創造の拠点となっていること、それを行っている台湾の人たちの建築や文化に対する真摯な姿勢を聞けた一夜でした。

衛武営国家芸術文化中心

今回の旅行の目的の一つが、この衛武営国家芸術文化中心(設計:フランシーヌ・ホウベン)を観ることでした。日本でも話題になっていたし、台湾の国家プロジェクトなので。
都市の中心から少し外れた地下鉄沿線に位置しています。
美麗島駅から東に向かって、高雄市文化中心、衛武営国家芸術文化中心、大東文化藝術中心と、芸術系や公園が数珠つなぎになっているエリアです。
衛武営国家芸術文化中心は、2003年に発表された新十大建設のうちの一つで、台湾全域に国際芸術文化センターを設置しようというもの。台中の台中大都会歌劇院(設計:伊東豊雄)、嘉義の故宮博物院南部院区(設計:姚仁喜)に続く3施設めとなります。

大きなガジュマルの樹がつくる木陰にヒントを得たとのこと。
造船所でつくられたすべてが一体となった鋼板による曲面の内部空間が、この建築一番のみどころでしょう。
材料はなんでも熱によって伸縮するので、熱帯地方のこの地では、夏の日没後に少し縮むと思います。溶接の跡も残している鋼板と道路のような路面の舗装、かなりクールな空間なので、ガジュマルの樹の木陰のように腰を下ろしてリラックスする空間ではないですが。