瀬戸鉄工

僕が育った川尻町には、瀬戸鉄工という鉄工所があります。
ここの、「焼いりこ」は、カタクチイワシを高圧でプレスすると同時に加熱して煎餅状にしたものです。
愛用してる人、どこかで見かけたことある人も多いと思います。
かの白洲正子さんも、かつて愛用していたと雑誌でみかけたこともあります。

今朝の新聞に、旨み成分を入れることで、一般の塩よりも20%塩分をカットした「減塩 味ものがたり (海人の藻塩)」が紹介されていました。
塩分のとりすぎは体に負担がかかります。冷蔵庫の普及で、保存食品の塩漬けが減り、東北では心臓病が激減したという話がありましたね。

元々は普通の田舎の鉄工所のはずなんですが、、、
近くに友達が住んでいたので、建物には見覚えがあります。
社長がちょっと変わったアイデアマンなのかな?
うれしいニュースです。

川尻町とお隣りの仁方の間に、蒲刈に渡る橋がかかっています。
ここは、女猫の瀬戸と呼ばれる潮流の激しいところで、いい魚が取れるところだそうですね。
イリコといえば、小いわしを干したもの・・・というイメージですが、元々は熬海鼠。
干した海鼠のことなんですね。
日本は清からシルクや漢方薬を輸入するために、石見銀山の銀を使っていましたが、これが枯渇した後は、物々交換による貿易に切り替えようとします。
食にはうるさい清ですし、出汁を取るための乾燥物は非常に高価です。
フカヒレやツバメの巣など。
干し海鼠も非常に価値が高かったようで、川尻からも大量に出荷されたようです。
あまり知られていませんが、牡蠣の産地ではシーズンオフには中国向けの干し牡蠣をつくっているところもあるようですね。いい出汁が出るそうです。

この旨味産業を受け継いでいるのが、瀬戸内沿岸であり、この瀬戸鉄工ということかもしれないですね。
カルビーも広島発祥ですし、オタフクソースももちろん広島。
どちらも焼いた澱粉に旨味成分をからめて軽食やおやつにするというもの。
地域が伝統的に受け継いでいる文化というものは、煎じ詰めれば人の喜怒哀楽の感覚ともいえます。
この調子で、旨味産業を活性化させて、地域を豊かなものにしていって欲しいものです。

マルガリータ

盆前に、村木嵐さんの「マルガリータ」を読んで、ぼろぼろ泣いてしまいました。
天正少年使節4人のうちの一人、千々石ミゲルが主人公です。
歴史と社会の大きな歯車に、4人の少年が踏み潰されつつも、共に誓った約束を守るために・・・・という話です。
大きな悲劇を扱う話では、善悪を明確に決めてストーリーを構築することで、読者の負担を軽くすることが多々有りますが、この話ではローマ法王も豊臣秀吉、徳川家康・・も皆、政治家としての政治的判断で悲劇の引き金を引きます。
重くて悲しい話なのですが、泣き終えたらすっきりする読後感。

構成も確かで、ストーリー展開も巧み。
最後まで謎を引っ張ったままでフィナーレを迎えます。
千々石ミゲルの最後の言葉の謎は、明かされず仕舞い。
手塚治虫であれば、これを漫画にできるかも・・・と思いました。

どんな人だろうと・・・思って調べてみると、、、
女性。千々石ミゲルと二人の女性の関係が軸なので、そこは非常によく描けていました。
1967年生まれ。ひとつ先輩です。
なんと司馬遼太郎の最後のお手伝いさんで、現在は奥様の秘書をされているとか。
納得です。
司馬家お手伝いからデビュー 「マルガリータ」で松本清張賞受賞の村木嵐さん

歴史系のドラマや小説は、どこまで史実でどこから創作か、気になるところですが、、、

「天草の乱が鎮圧されてから約八ヶ月後、マカオのマノエル・ディアス司祭がイエズス総長にあてた書簡より。
《有馬のキリシタンはキリシタンであるが為に殿から受ける暴虐に耐え切れず、十八歳の青年を長に選んで領主に反乱を起こしました。その青年は昔ローマへ行った四人の日本人の一人ドン・ミゲールの息子であると言われています。彼らは城塞のようなものを造ってそこに立てこもりました》」

つまり千々石ミゲルの息子が天草四郎時貞だったとイエズス会に報告しています。
千々石ミゲルの棄教のことは当然イエズス会は詳細を把握しているはずなので、間違えてるということは無いと思います。
イエズス会を退会し、裏切り者の烙印を押された千々石ミゲルの息子が、天草四郎。この落差を、「マルガリータ」はしっかり埋めきったと思います。
次の作品をぜひ期待したい。

「龍馬伝」でも、耶蘇教(耶蘇会)の話が出てきています。
耶蘇会とはイエズス会のことです。
イエズス会は、広島には村野藤吾設計の世界平和大聖堂があります。
安土桃山時代の日本で切支丹があれだけ広まったのは、貿易による利益だけではなく、イエズス会の布教の情熱と清貧さにあったと思います。
イエズス会は、バスク地方の狂信的な傷痍軍人が始めた教団で、司馬遼太郎の「街道をゆく〈22〉南蛮のみち 1」がかなり詳しく書いています。

カソリックの征服や聖戦、殉教の感覚は、なかなかわかりづらい感覚だと思います。
現代でも、911同時多発テロや、アフガンへの報復、イラク戦争など、キリスト教徒とユダヤ教徒、イスラム教徒の終りなき争いは、日本人には無い感覚だと思います。

塩野七生さんの「絵で見る十字軍物語」が面白いです。
これから十字軍の物語を書いていくようなので、その序論として、ギュスターブ・ドレの絵に解説をつける形で全体像を描いています。

第一回十字軍が始まったのが1096年。平清盛のお父さんが生まれた年です。
このころは、地球温暖化が激しかった時期で、モンゴルが世界征服に着手する100年前です。
第十会十字軍が終わったのが1291年なので200年間も征服事業を行ったわけで、これが、レコンキスタ終了後(1492年)のコロンブスの中南米発見と征服、そして世界征服という流れになっていき、日本にイエズス会到着が1549年。
天正少年使節がローマ法王に謁見したのが1585年。島原の乱が1637年。
千々石ミゲル達が、懸命にさからったのは、十字軍から540年の巨大な歴史の歯車だったわけです。

祭りの終わり

2年半前から予選が始まって、本選が丁度一ヶ月。
長いようで短いサッカーのお祭りが終わりました。
おそらく、喜んでる人が一番多いと思われるスペインが優勝。
試合だけじゃなく、数々のジンクスを破っての堂々たる優勝でした。
しかしpaulはすごかったですね。

8試合すべて当てるのは1/256の確率だそうです。
粘菌を使って迷路の実験をしたケースがありましたが、うまく迷路を抜けていくそうです。
未来予測能力が、粘菌やタコにはあるのか?
生き物は不思議ですね。

いろいろな国のいろいろなサッカーがありましたが、総じて強かったのはコレクティブなサッカーです。
連動性、攻守のつながり、強さと激しさ、勝負への執着。
当たり前のところがきちんとできてるところが最後まで勝ち残りました。
金満クラブの高給取りフットボーラーは、酷使されたシーズンの終わりのためか、ほとんど活躍を見ることなかったですね。
個人に頼ってるチームも。

決勝は、中国代表のカンフーサッカー顔負けの橙海賊と、赤い騎士達。
カンフー×サッカーの試合です。
去年のCLの時のように、最後にイニエスタが決めてくれました。
早死した友人の名前をアンダーウエアに書き込んで望んだ試合の最後の最後に決めるなんて、、、、
あのスペイン嫌いのバルセロナでも、国旗が窓から下がったということなので、本国では相当な盛り上がりだったようです。
サッカーが勝った決勝でした。

2009年のCL決勝でチェルシー相手にぶち込んだイニエスタのゴール

明後日から、Jリーグ開幕。
さあ現実に戻って、我が街のクラブを応援しよう。
広島は、けが人もほとんど復帰し、若手もどんどん台頭してきています。
稼働できる選手が足りなくて岡田ジャパンのようなサッカーをしていた前半と違って、華々しい攻撃的なサッカーを展開してくれそうです。

スペイン×ドイツ

ドイツ代表は全員自国リーグ所属選手で、スペイン代表は3人を除いた全員が自国リーグ所属選手。
2ヶ月前のチャンピオンズリーグで決勝に進んだバイエルンと優勝したインテルに負けたFCバルサ。
オランダ代表のスナイデルが所属するインテルに負けた両チームの選手たちが引っ張る準決勝の一戦は、お国の特徴が一番発揮されるゲームとなりました。
ドイツは若返りに成功し、エジルなどいい選手が活躍しましたが、最初から受けに廻ってしまって、最後までスペインのペースを崩すことができませんでした。オシム流に言うと、相手をリスペクトしすぎたという状況でしたね。
オランダは逆に最初から主導権をとりに行くのではないでしょうか?

今大会は、グループリーグから番狂わせが多く、アジアや東欧、南米の活躍と、一部欧州、アフリカの劣勢が目につきました。
しかし、決勝トーナメントに入って、優勝を目指した戦いの中で、ジンクスを覆す結果が相次いできました。

×欧州以外の開催では欧州は優勝できない。
×欧州と南米が交互に優勝。
×開催国でなければ初優勝は無い。
など。

結果として、オランダとスペインという初優勝を狙う欧州が決勝を戦うことになりました。
今年のスペインは、EURO優勝の時と同じくバルサの選手を主軸に据えています。スタメンでは来季加入も入れれば7人。
その現在のバルサのサッカーを生んだのは、かつてオランダ代表で活躍したヨハン・クライフ。
そういう意味では、決勝はクライフ対決ということになります。
すごくいい試合になりそうですし、どちらが勝っても、サッカーが希望に向かって一歩踏み出すという状況になると思います。
そういう意味では、ドイツ×ブラジルじゃなくてよかった・・・

又、オランダは昔はスペインの植民地。独立戦争で勝利してその勢いでアジアにやってきて、ポルトガルの利権を奪い、スペインポルトガルに代わって江戸幕府と交易を結ぶようになります。
当時の呼び名で言うと、南蛮人と紅毛人の戦さ。ということになりますね。

熱くスピードがあるオランダ。華麗で緩急のあるスペイン。
スナイデル×シャビ+イニエスタ。
170cm68kgの戦いです。

2008EUROでスペイン勝利ののちの楽しそうな映像