宜蘭県 冬山

宜蘭県のある蘭陽平野は、台湾の険しい山脈を流域とする川がいくつもあって、水害に悩まされる土地でした。
陳県長は、平野で5番目に大きい冬山河を改修するにあたって、単なる土木事業ではなく、観光地としての魅力をつくる計画としました。川の中流、下流域に二ヶ所の親水公園をつくって、国立芸術園区を誘致し、それらをサイクリングロードでつないでいます。
高速道路や鉄道を高架にし、その下を公園などに活用。多くの官庁や機関、企業が関わったプロジェクトであることは想像できますが、全体が一体となって整備されています。縦割社会の日本では想像できない状態。

当初、自転車をレンタルして川の中流から下流まで一回りしたかったのですが、雨なので鉄道で冬山駅から冬山生態緑舟だけとしました。残念。
冬山駅は鋼管とテフロンの膜で作られたシンプルな建築で、持ち上げられた線路の下には、自転車のレンタルサイトや公園が整備されています。鉄道で来て冬山生態緑舟で船に乗るグループなどがいました。
冬山生態緑舟は、2016年に河川改修に伴って美しくつくられた公園で、下流域にある1994年に完成した冬山河親水公園の弟分とも言える公園。

宜蘭県 羅東

頭城から海沿いを通って羅東に向かう途中、宜蘭市バスターミナルで乗り換え。
7年ぶりですが丁度建替わった新しいターミナルで、Fieldofficeの新作でした。ひと目でわかるようになりました。

宜蘭市から羅東に向かう途中、宜蘭縣政府(象設計集団)に立ち寄りました。
週末なのに、建物は開放されていて、1階は通り抜け通路として活用されています。開放されている通路にいくつもの中庭が面していて、真夏でも風は通り抜けそうですが、空調された部屋から別の部屋への行き来が多そうなので、執務する人の温度変化が著しくて大変そうではあります。名護市庁舎の思想をさらに発展させた構成と密度の建築ですね。想像以上に力作でちょっとびっくりしました。

日が暮れて羅東に着くと先ずは羅東夜市。ネギの産地なので、ネギを使った料理が美味かった。羅東夜市では事前に調べてた「七巧味三星蔥多餅」と「羊舗子当帰羊肉湯」で焼うどんと羊のスープ、相席になった桃園から来た女の子に教えてもらった「義豐蔥油餅」、最後に「羅東紅豆湯円」でお汁粉。

台湾では、日本統治時代の公共建築や工場がリノベーションされて、様々な活用をされていますが、木造平家の社宅もかなり残っていますので、これを小さなカフェや書店に活用されています。
羅東では、成功國小校長の官舎がリノベーションされて、旅人書店として活用されています。
少し離れている公正国民小の角にある、藝境絲竹文藝空間に行ってみました。これもてっきり日本統治時代の社宅リノベーションかと思ったのですが、店の方によると新築だとのことです。よく見ると軒高が高く、洋小屋でした。日本統治時代建築リノベ好きが極まって、それを模した新築をするようになったのかと、、、、。日本の古い建物を一番大切にしてるのは台湾のようです。

宜蘭県 頭城、壮囲沙丘

礁渓から頭城に台鉄で移動。18世紀末に漢族が入植に成功した最初の町です。
その後、宜蘭平野には、鉄砲で武装し城壁で町を囲む植民都市が少しずつ増えていって、原住民のカヴァラン族は花蓮のあたりに移住することになりました。今では、バス会社やウィスキーのブランドとして、カヴァランの名前として使われています。
その100年後には日本が統治することになって、西郷菊次郎(隆盛の長男)が、宜蘭長官として赴任し、この地域の最大の課題だった水害対策のために、30年かけて堤防を築いています。記念碑もあります。西郷菊次郎は後に京都市長になって、「京都百年の大計」として京都市三大事業「第二琵琶湖疏水(第二疏水)開削」、「上水道整備」、「道路拡築および市電敷設」を推進したようですから、インフラに力を入れた政治家だったのでしょう。

頭城の町には老街(ラオガイ)と呼ばれる古い街並みが残っています。
港に隣接したエリアには、蘭陽博物館があって、宜蘭県の環境や歴史が学べます。なかなか面白い展示内容でした。
池の畔には、藤森さんが設計した檜材の小屋が建っていましたが、展示されているだけで、使われていなようなので残念。
洪水を起こしている川は、山奥から木材を流すことに適しているようで、檜材の集積地だったようです。

頭城から東海岸沿いに南に向かって、全長16kmの長大なサイクリングロードが整備されています。
バスでその途中にある壮囲沙丘の壮囲沙丘旅遊服務園区(設計:Fieldoffice)に行ってみました。
海に沿って長く続く砂丘の途中に、建築が丘のような曲面の屋根が緑化され、内部が展示、ワークショップ、カフェ、店舗となっています。隣接する砂丘には環境アートエリアとなっているようです。
自由な角度で構成された内部空間では、子供の本の読み聞かせ会や、小さなホールで演奏する人がいるなど、地元の人に親しまれているようです。

宜蘭県 礁渓

桃園空港から温泉町の礁渓に直行。天気予報通り5日間毎日雨。
礁渓は、宜蘭県の北にある温泉地で、温泉地が山に多い台湾では珍しく平地の温泉地です。海には亀島が浮かんでいて、日本最西端の与那国島とは100kmほどの距離にあります。黒潮がぶつかって北東にターンすると同時に、フィリピン海プレートがユーラシアプレートにぶつかって、沈み込む場所なので地震も多く、温泉が湧いてるということでしょう。

バスターミナルから大きな屋根(礁溪轉運站旅人廊道、設計:Fieldoffice)が隣接する礁溪溫泉公園(設計:象設計集団)につながっている。
町の中心部には、町を縦に貫く礁溪湯圍溝公園(設計:象設計集団)がある。道の南側には夜市、向かい側には足湯。ガラス屋根の明るい空間になっている。近くのホテルの足湯はみんな20歳前後の若者で、全員がスマホをいじってて無言。ターミナル横の足湯は、おばちゃんグループや家族、カップルが賑やかに話してる。僕たちも小籠包を買って足湯でゆっくりした。

翌朝、Fieldofficeの建物を観にいく。礁渓生活学習館、礁渓国民学校校庭地下駐車場、宜蘭県礁渓郷公所。
雨が多くて有機的な環境と一体化しつつも、力強い空間をつくっています。所々にユーモラスな遊びや親しめる要素をちりばめてるのも特徴と言えます。