海の民パンジャウ

先日、NHKのドキュメンタリー海の民バジャウの少年
が放映されていました。
とても美しい南の海に暮らす少年の話。興味深かったのは、その一族の暮らし。
海の上に建てられた高床の集落に暮らし、元々は船で暮らしていたという。
広島の厳島神社は、海の上に建つ高床の神殿で、船に暮らしていた人たちの集落も瀬戸内にはいくつもあります。
その土地や社会制度に縛られない自由な生き方は、昔から心惹かれるものがありました。

ハリー・アルロ・ニモさんは、大学院生だった60年代にバジャウ(パンジャウ)の集落に2年ほど住み、世界に初めてバジャウを紹介した人物。
この本は当時の幸せに満ちた日々のエピソードを綴ったエッセイ集のような形をとっています。
今はずいぶん失われていると思いますが、当時の食生活や生活文化が伺えて大変興味深い。
関野吉晴さんの本は、動乱の時代を経た現在のバジャウの人たちを訪ねた写真中心の本となっている。
失われたといいつつ、まだ明るく暮らす希望が伺えて少しホッとする内容。

漂海民バジャウの物語―人類学者が暮らしたフィリピン・スールー諸島

地球ものがたり 海のうえに暮らす

聞き書 広島の食事

日本の食生活全集の広島県版である「聞き書 広島の食事」を読んでみました。
昭和初期の、広島県各地の食生活を取材し、写真もあわせて記録したものです。
出版された時期が昭和60年代なので証言もリアリティがあり、その当時の生活が目に浮かぶようです。
漁村や農山村など様々な生活が描かれていますが、どこも家庭も共通しているのが、農作業の大変さ。
両親だけでなく、祖父母も子供もそれぞれ仕事があり、一年の中で正月も含めて僅かな休日しか無いうえに、十分な米も食べることができず、一所懸命働いています。
先祖の皆さんの努力。ほんとうに頭が下がります。
当時の農家は、基本的には一部換金するものを除けば自家消費するものを生産し、それで家族が一年食べていくというスタイルです。
結果、計画的に多種多様な作物を作り、味噌や醤油、漬物をつくることになります。
生産と生活が家庭の中で完結するため、気候や植生と一致した暮らしが非常に興味深い。

聞き書 広島の食事 (日本の食生活全集)

ガンダム THE ORIGIN

2001年から10年がかりで連載されていた安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の映画がついに完成するそうです。
小学生の頃、最初のTVアニメを観ていた世代とすれば歴史の中に生きているということを実感します。
総監督はもちろん安彦良和
ガンダムの名のつくアニメは様々ありましたが、安彦良和が絡んでいるものといないものでは、僕の中ではまるっきり別物でした。
第一話は、いわゆるファーストガンダムで描かれていなかった、ジオン・ズム・ダイクンの活動やシャア、セイラの幼少期から、ジオンと連邦の一年戦争初期までが描かれることになりそうです。
ガンダムシリーズの最大の謎であるシャアの復讐心とメンタリティ。ジオンという国名にもなった革命家。ザビ家やラル家との因縁。
セイラさんのもつ寂しさと陰のある気品。あのとき描かれなかったことすべてが描かれる貴重なストーリーだと思います。

デモ版や冒頭部分はこちらで観れます。

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今年に入って、、、

今年に入ってから、人の命に関わる厄介な事件が非常に多いです。
日本だけでなく世界中で。
僕が物心ついた時には、ベトナム戦争も大学紛争も一段落していましたので、その時代の事件5年分がこの一月半に起こった気がします。

ふと、尊敬する真宗のお坊さんの話を思い出しました。
「NYにある911テロの慰霊碑に刻まれた名前を見たが、被害者の名前はあったが加害者の名前が無かった。 もしも、加害者の名前をもこうした慰霊碑に刻むことができることができる世の中になれば、、、」

それは、罪なく失われた人の命と同じくらい、罪ある人の命も尊いという意味なのでしょう。
悲劇の被害者を想って涙すると同時に、罪の自覚すら無い凶悪な加害者の死に涙できるのか?
僕の想像を超える世界です。
もちろん人の命にかぎらず、地球上、全宇宙の物事の成り立ちや、起こる事象すべて尊いのでしょう。尊いはずです。

正しい/間違ってる 良い/悪い 好き/嫌い 合理的/非合理的 ・・・
様々な相対的な価値観や論理の中で僕達の日常生活や社会は営まれていますが、生命の尊さやそれに類する存在はそうした人間のつくりだした社会的な価値観よりもはるかに上のレイヤーに存在しているのかもしれません。

そうした尊さをイメージすることは僕の能力をはるかに超えますが、少なくとも日々向き合う対象を尊いと思う意識は持っていたい。