人口減少社会の処方箋

増田寛也さんがぶちあげた人口減少の結果、地方の自治体が消滅するという試算について、それに反論する本はいくつかでています。
その多くは、メンタル中心のもので、「故郷を愛する気持ちがあるかぎり過疎地は不滅です」的なもの。
しかし、「田園回帰1%戦略」はある程度戦略と呼べるようなものが提示されている。
島根県の人の本なので、広島の住宅地や島根の自治体の具体的なケースで論を組み立てているので、近郊の人にとっては大変身に染みてくる内容です。

戦後の日本は公序良俗のために、個人の財産権を制限するという発想は封じられています。
いくらいい企画であっても、不動産や、住民の移動などに判がもらえなければ自然死するまで放置されるという状況。
過疎地の未来のために、一歩でも前に進めることができるのか?と悩む人にとっては有益な本です。

全論点 人口急減と自治体消滅

田園回帰1%戦略: 地元に人と仕事を取り戻す (シリーズ田園回帰)

村上海賊の娘

和田竜の新作「村上海賊の娘」の上を読んでみました。
ブスの女性が主人公!だったので、どうなることやらと心配しつつ、読み進めていくと。。。
表紙のイラストは、まるでナウシカの後ろ姿。
ブスと言われてる主人公 景は足が長く背が高く、目が大きい上に鼻も高い。つまり西洋人顔だったらしい。
西洋人慣れしてる堺に行くとモテると言われて、景は一向宗の門徒と共に大坂に向かうことから物語は展開していきます。
前作「のぼうの城」で展開された籠城と攻城の様々なドラマを描く手腕は快調。

村上海賊の娘 上巻

瀬戸内海

広島にまつわる様々なエピソード満載の本です。
歴史や地理を縦糸に、人を横糸に織り込んだ内容で、選んだエピソードも的確で、歴史&地理のバランスも良く、人のつながりも興味深い話ばかり。
手にとった時はそれほど期待していなかったのですが、無駄なく教養を感じさせる内容で一息で読んでしまいました。次作を期待したい。

一つ興味深かったのは、、、
第一次大戦時に似島のドイツ軍捕虜収容所の捕虜や青島在住のドイツ人が、大戦後に日本に残って様々な技術や文化を伝えていった。
ユーハイムさんのバームクーヘンは有名。
サッカーもその一つで、捕虜チームと対戦した広島一中チームは惨敗し、その後収容所まで教えを請いに行った。
そこで学んだドイツサッカーの技術を伝えたことが、後にドイツ人監督のクラマー招致につながり、東京五輪やメキシコ五輪の躍進につながっていったという。
又、そのドイツから学んだ広島一中から東洋工業サッカー部(現サンフレッチェ広島)をつくった山崎芳樹、三菱自工サッカー部(現浦和レッズ)をつくった岡野良定を輩出する。
現在は激しい因縁のある両チームですが、その因縁は似島捕虜から始まっているということのようです。
その浦和を作った岡野が招聘したブッフバルトがかつて所属したドイツのクラブをつくったのは、このとき似島にいた捕虜だったという話も有。

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島めぐり人めぐり―広島編

海の民パンジャウ

先日、NHKのドキュメンタリー海の民バジャウの少年
が放映されていました。
とても美しい南の海に暮らす少年の話。興味深かったのは、その一族の暮らし。
海の上に建てられた高床の集落に暮らし、元々は船で暮らしていたという。
広島の厳島神社は、海の上に建つ高床の神殿で、船に暮らしていた人たちの集落も瀬戸内にはいくつもあります。
その土地や社会制度に縛られない自由な生き方は、昔から心惹かれるものがありました。

ハリー・アルロ・ニモさんは、大学院生だった60年代にバジャウ(パンジャウ)の集落に2年ほど住み、世界に初めてバジャウを紹介した人物。
この本は当時の幸せに満ちた日々のエピソードを綴ったエッセイ集のような形をとっています。
今はずいぶん失われていると思いますが、当時の食生活や生活文化が伺えて大変興味深い。
関野吉晴さんの本は、動乱の時代を経た現在のバジャウの人たちを訪ねた写真中心の本となっている。
失われたといいつつ、まだ明るく暮らす希望が伺えて少しホッとする内容。

漂海民バジャウの物語―人類学者が暮らしたフィリピン・スールー諸島

地球ものがたり 海のうえに暮らす