2014年を本で振り返ってみる その2

日本文化の構造と古代史については相変わらず関心の高いテーマ。

古代史族について。
日本は、天皇家を中心に、后を提供する権力者が入れ替わることで、その時代権力構造をリフレッシュしてきました。
大規模な政権構造の変化の裏には、有力な外戚が入れ替わる事も多々あったようです。
応神朝は葛城、継体朝は大伴(+物部)、欽明以降は蘇我、文武以降は藤原と言った感じです。
政変が起こると、大きな権力を得る集団がいる一方、負けた集団は僻地に移動したり、流民化したりします。
そのあたりは、記紀に書かれていなかったり、ぼかされていたりするので、実態を把握するのは非常に困難なようですが、地方の歴史的文化を見ていく上で非常に重要な視点です。
中国地方では出雲や吉備は、強大な力を持っていた時期がありますし、四国北岸も吉備や大伴の影響下にあった時期もあります。

秦氏は半島から製鉄や機織りなどの技術と共に移住してきた集団で、山城盆地西部を拠点としていました。他にも、既存の製鉄地にも移住したようです。
「秦氏の研究」は、その存在に迫る良書です。
物部氏は没落後、関東方面に移住したという説あり。謎多き一族。

網野さん。中世はなかなかイメージ湧きません。何かが大きく変わったのですが、その原因が今ひとつ。 もっとイメージが湧かないのは近代の身の回りの地域かもしれない。 特にカラー写真がまだない時代、それほど時間が経ってないはずだが遠く感じる。 土地の存在と意味を知る。

宗教という意識なく、仏教や神道が日常の中に浸透しています。少しそのあたりを知ってみる。

2014年を本で振り返ってみる

今年は本を130冊ほど読んでいるようです。
ジャンルも作家もバラバラ。
多少整理しながら振り返ってみたいと思います。

地方で小さくコンパクトに暮らすことが今後必要になってくるのではないか?との思いは昔から強く、家や生活に関する物は自ら作り、可能な限り自給自足に近い生活をすることは憧れてはいましたが、まだまだそこまでのスキルが身につかないので、相変わらず本を読んで誤魔化してたなというのが現在の感想。
しかし、世界が破滅的な金融緩和を行い、日本もそこに参加。過剰な生産物が国境を超えて日本に流入するのも間近。
大規模自然災害や、これまでに人類が経験したことのないタイプの不況、それを誤魔化すための戦乱への危機を感じる人も多いと思うが、できるだけシンプルに暮らすスキルを身につける以外に出来る準備はないのではないだろうかと改めて思います。

社会的現実を把握するには、増田さんの「地方消滅」から入ると未来の日本の姿がイメージできると思います。
若い女性の増減率が、その地域の人口の増減を測る指標であることはよく理解出来ました。急には増えないので、今後は争奪戦が始まるかもしれません。
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地方再生の処方箋。地方が自主的、自立的、自律的であるような仕組みが必要になってくると思います。
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具体的なスキル。
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その他。
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ロバート・ウェストール

宮﨑駿が表紙を描いてるので読んでみたら、不思議な魅力にとりつかれたようで、半年に一冊ほどのペースで読んでいます。
ジャンルは児童文学のようですが、大人の目線で見た児童文学ではなく、大人や社会や自然界に巻き込まれた子どもたちを描いてるものが多い。
吹雪で死にそうになった話。戦時中の生活。友人を亡くした暴走族の話。
喜怒哀楽の幅が広いので、読んでいながら複雑な気分になりますが、ウェストールの心の深さがその読後感を気持ち良いものにしてくれます。

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本能寺の変 431年目の真実

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著者は、リタイヤした理系サラリーマン出身の民間歴史研究者。
苗字から分かる通り、明智光秀の子孫だそうです。
最近、こうした団塊の世代のリタイヤした民間歴史研究者による本が目につきますが、かなり興味深いものが多い。
着目点がプロ歴史研究者と違って斬新で、丹念な資料研究やフィールドワークをベースにしているものは、内容も濃く面白い。
この本も、斬新かつ資料研究が広い上に深く、読み応えがあった。
恐らく、本能寺の変の真実の9割は当たってると思う。

最初は、世間で言われてる定説がいかにいい加減かということを一つ一つ証明していきます。
僕達が、あたかも真実と思ってることを、この調子で洗っていったら、ほとんどつくり話じゃないかとも思います。
学校の歴史の教科書で書かれてることも、基本的には現時点の定説でしかないので、話半分と思っておくのが正しい歴史との向き合い方のように思います。具体的な事実関係は正しくても、その事件の動機や登場人物の善悪などは明らかに編集されてると思います。

この本の著者は、定説と言われているストーリーの原典や更にその引用元をあたり、それらの当時の情報の流れを整理することから推理を始めます。
こうした政変に関わる情報は、あるストーリーを後付けする意図を持って書かれたものもあれば、あえて書き残されないものもあります。そこで、当時の日記まで調べて、その時代の空気の流れまで読み込んでいきます。
その結果到達した結論は、非常にリアルで深く、当事者の心理的な動きが手に取るようにイメージできます。

ただ一点、動機の部分がまだ弱いと思います。
本能寺の4ヶ月前には、明智光秀が武田勝頼に謀反の連携を呼びかけたらしいのですが、そうであるなら毛利や上杉にも呼びかけたと見るのが自然です。
毛利→安国寺恵瓊→羽柴秀吉 というルートで情報が漏れたと見るのことが自然だと思います。
もう一つは、近衛前久の動き。この人物が黒幕とする説があり、僕はそれが現実的との思っていましたが、この本では名前が一度出てきただけ。
果たして明智光秀が一人でやらかしたことなのか?という意味で、この人物が黒幕でありながら、敗色濃厚と見て切り捨てたという線は説得力があります。
本能寺の変は、226事件と似た性質がありますが、226事件も実行者の単独行動ということで幕引きがなされました。
黒幕とはいえないまでも、後ろ盾のような存在がいたとしないと、この事件の最後のピースがはまらないと思います。

その後の、豊臣秀次や千利休の切腹事件も、この本能寺の変の延長線上に解いています。
それも、かなり興味深い分析なので、それぞれ一冊にまとめて欲しい内容ですが、黒幕として近衛前久が動いていたと思うなら一連の動きとしてさらに説得力は増すように思います。

お見事!というスッキリ感のある好著でした。