新年

あけましておめでとうございます。
旧年中は皆様に大変お世話になりました。
今年もよろしくお願いします。

大晦日の晩は、近くの大歳神社の年越しのイベントに21時ころから、3時ころまで参加してきました。
年が明けたら、午前は女子サッカーの決勝戦。神戸の圧勝。
初詣から帰ってきたら天皇杯決勝。その後録画していた女子W杯決勝。涙。とサッカー三昧の正月でした。

初詣は、家族と再び大歳神社へ。その後草津八幡宮へ初詣。
草津八幡宮は厳島神社と同じく推古朝時代に多紀理姫を祀ったことから始まったと神社の由来に書いていました。
海を挟んだ向かいにもなる大分県の宇佐から八幡さんがやってきたのはその後のことのようです。
厳島神社は宗像の三女神を祀り、草津八幡宮はそのうちの一人である多紀理姫を祀っています。多紀理姫は日本海海戦の舞台となった玄界灘にある沖の島の神さんです。
推古朝と言えば随に使者を遣わした時期。外国への航路を仕切る宗像一族が中央政府と深い関係を持ち、玄界灘から瀬戸内海に進出してきた時期なのでしょう。
神社は古い港を見下ろす丘の上にあって、広く眺望が開けています。海上交通の拠点としては申し分ない場所の位置しています。
今年の大河ドラマは宮島と縁の深い平清盛が主人公ですが、厳島神社以外の海のルートの歴史を考えてみるいい機会です。
できるかぎり津々浦々に足を運んで、広島の海の文化を感じる年にしたいと思っています。

万城目学さん

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中学生の息子が薦めてくれたので、万城目さんの小説をいくつか読んでみました。
デビュー作である「鴨川ホルモー」は、京都の大学に通う大学生達に伝わる秘密の行事を描いたもの。
京大生が主人公で、京都の大学や地域がかなり具体的に出てくるにも関わらず地元民的目線ではないので、実際京都の大学に通ってた人かなと思ったらビンゴでした。
僕も学生時代、休みのたびに京都の庭や寺を廻っていたので、なんとなくの気分はわかります。
「ホルモー六景」は、「鴨川ホルモー」の外伝的な短篇集。
構成がしっかりしてるので、外伝が厚みを深めるいい感じに仕上がっています。
「プリンセス・トヨトミ」は、大阪が舞台。
大阪城の地下に・・・・という話。
ある商店街が濃密に描かれています。著者の育った街だそうです。
大阪育ちで京大法学部卒。この小説でも、内閣法制局に出向した経験のある会計検査員が主人公で出てきます。
子供の頃に妄想しがちな愉快なお話をファンタジーとして作品に仕上げてるというところは面白いですし、都市や街といった空間的スケールの描き方も面白い。
ヤングアダルト世代からお年寄りまで楽しめる時空間の物語です。

TPPと平清盛

今、TPPが次第に話題になって来ました。
かなり大きな問題のはずなのに、政府や与党は説明せず、マスコミも解説もしない。そのく海外や水面下で着々と準備が進んでる。そんな不思議な状況が続いています。
日本にとって必要なものであれば、時間をかけて説明や説得をし、マスコミもしっかりと報道や解説をしてたと思いますが、アメリカからの強い要求が背景にあるので、極力波風を立てず、押し切ろうというスタンスなのでしょう。
TPPと同じような不可解な政策が過去にありました。
郵政民営化です。
あの時もアメリカの強い要求を断りきれず、衆議院を解散してまで強行突破しました。
TPPに賛成している議員や政党は、かつて郵政民営化に賛成していましたし、郵政民営化に反対の人はTPPにも反対してる。
政界再編には実は一番わかり易いテーマのように思います。

日本は、伝統的に自由貿易派と国内市場保護派が、大きな政治勢力として戦ってきた歴史があります。
先述のようにTPP×農業保護や郵政民営化×郵政保護。
戦前では浜口雄幸内閣の金解禁も大きな政争を生み、テロも発生しました。膨大な金が流出しました。
幕末の開国×攘夷。攘夷のはずの薩長が貿易の利を生かして幕府を倒し、明治維新を実現しました。
もっと前では、織田&豊臣の海外貿易政策×徳川の鎖国政策。
足利義満の日明貿易
平清盛の日宋貿易
など

来年の大河ドラマは、広島でもロケがあった平清盛です。
平清盛は、元々宮廷の警備員程度の身分であった武士を、朝廷の権力抗争に乗じて貴族並みに地位を高め、最後は頂点に上り詰めます。その力の源泉が貿易による巨額の利益だったわけです。
しかし、貿易の利に縁遠い在来勢力の力(関東の在地領主達)に打ち負かされてしまいます。
今回のTPP賛成派を平清盛、反対派の元農水大臣を源頼朝に置き換えてみると、来年のドラマが楽しめるように思います。

洪水と高床建築

   

海水面が高くて、浸水被害が続いたと思ったら、タイで深刻な洪水です。
海や大河というのは逆らいようのない巨大な龍のようなものだと言ったのは確かにそう思います。
地球温暖化が盛んに憂慮されていた時、海面上昇や、氷河が溶けた水での大洪水の危険性はずいぶん指摘されてきました。
水がいかに怖いか。よく理解できます。

これまで海面は何度も何度も上がったり下がったりしてきました。
一番高かったのは6000年前ころの縄文海進と呼ばれる時期。高台に縄文時代の遺跡があるのは、そこが海岸だったからです。
海に近い峠道は、海峡だった可能性が高いです。
低かった時期は、最後の氷河期で、7万年前から1万年前と言われています。
その頃、現在のインドネシア周辺の浅瀬が地表面となっていて、スンダ大陸と命名されています。
アフリカから出発した人類は、氷河期でありながら赤道に近いこの大陸に大勢住んでいたと言われていて、大陸が徐々に水没するに従って、ユーラシア大陸やオセアニア地方に散らばったと言われています。
毎年数ミリとか数センチ海面が上がって行くということは、振幅を伴って上がっていくわけですから、洪水や浸水の頻度が次第に多くなる。それに音を上げた人が奥地に引っ越すということを繰り返していたのでしょうか。

興味深いことに、この地方には今でも海の上に家を建て、街を作って住んでいる地域があります。
雨季の洪水の多い内陸部の国でも同じように水の上に住んでいます。
厳島神社も同じ建築の形式です。
弥生時代の高床建築は、米蔵に使われていて、それはネズミの害から守るためだった・・と習いましたが、現実にこうした海面上昇を見ると、水辺で暮らすために開発された建築の形式であるように思えます。

稲作と高床建築は非常に相性がいいですが、丸木舟も相性がいいのです。
ベトナムで見かけた足が地面につかないほど深い水田での農作業は、浅い舟(サンパン?)に乗って行なっていました。

土木の世界では、基準点を特定の海面に置きます。
海面を絶対的な基準にしていることが、海をまるでテクノロジーが支配したかの錯覚を生んでいたのかもしれません。
海は100m以上も上下します。
海面が低い時は、日本海や瀬戸内海は広い広い谷でしたし、海面が高い時は今の平地は海面でした。
そういう時として凶暴になりうる海に対して、建築は高く、軽く足を伸ばして凶暴さを受け流す。そういう人類の知恵を感じました。