eのつくAnne

NHK BSPで「アンという名の少女(ANNE WITH AN”E”)」を放映しています。
昭和後期世代にとっては、村岡花子訳の小説や高畑勲監督のアニメの印象が強いと思います。
高畑監督のアニメには、途中まで宮崎駿さんが関わってたようですが、あまり好きなキャラクターではなかったようで、カリオストロの城に行ってしまったようです。

今回のドラマはカナダのCBCとNetflixの制作で、3シーズンのうちの第1シーズン。
アンがプリンスエドワード島に行くまでの孤児院などでの辛い体験がトラウマになっている設定をはじめ、ありえたであろう様々な社会状況がリアルさを感じるくらい描かれています。
かつてのアンの想い出を大切にするなら観ない方がいいかも。

作者のモンゴメリは1874年(明治7年)生まれなので、高浜虚子や佐藤紅緑と同い年となります。
作品を発表したのは1908年なので、19世紀末のプリンスエドワード島の生活が描かれていることになります。
孤児院で育った少女が高い教育を受けて成長する物語として有名な小説に「あしながおじさん」がありますが、作者のジーン・ウェブスターは1876年生まれ、作品の発表は1912年なのでほぼ同時代と言っていいでしょう。
両作品は、カナダ東北部とニュージャージー州と距離は離れているものの、共に孤児院など社会福祉や女性の教育や社会活動についてをテーマにしていますが、その時代の女性の勢いが今に続いてるように感じます。
日本でも平塚らいてうの青鞜が1911年創刊。
女学校を出て教師をしていた祖母は1905年生まれだったので、大正デモクラシーの時代の空気から何らかの影響を受けているのかもしれません。

エール

観たり観なかったりする朝ドラですが、今回のエールは毎回観ています。
音楽愛を貫く制作陣やキャスティングと、学生時代を過ごした豊橋が舞台であることもその一因ですが、本来は東京五輪に向けて華やかな空気を醸成しようとしながらも、突然の新型コロナウイルスのパンデミックによって社会における役割自体が大きく変わってしまったことをどのように受けてめていくのか?というあたりにも興味があります。
ちなみに二階堂ふみ演じる一家が住んでいた豊橋市の実家は、下宿から徒歩圏でした。

今週は、主人公の作曲家がビルマのインパール作戦を慰問に行くエピソードでした。
実際にも、火野葦平や向井潤吉とビルマに慰問に行き、古関さん以外の二人は戦地に行き、その時の火野さんのメモや向井さんのスケッチが「インパール作戦従軍記」にまとめられています。
以前、先祖調べをしていた時に、遠い遠い親戚の男兄弟二人が、ビルマと硫黄島で戦死していました。
せめてどんな状況だったか調べてみようといくつかの体験者の記録をいくつか読んだ一冊が火野葦平の本でした。

朝ドラは来週からは戦後の新しい展開を迎えていくと思います。
疲弊した社会で音楽がどのような力を発揮するのか。楽しみにしています。

「時をかける台北散歩」

6月29日、尾道の松翠園で、「時をかける台北散歩」というシンポジウムがありました。
台北で日本統治時代の建築を再生した「青田七六」を運営する水瓶子さんがゲストでした。
青田七六」は、旧台北帝大の教員用官舎で、戦後は台湾大学の官舎として使われていたもの。その庭付き一戸建ての建物をリノベーションして、様々な文化活動や、日式料理を提供する店としています。

台湾では日本統治時代の建築を再生する事が非常に盛んです。実際にその活動の中心的役割の人の話を聞くことができて面白かった。
聞き手の渡邉義孝さんは、著書を高雄の誠品書店で見かけていたので、本人の話も聞けたのもよかった。
異国の地で日本の古い建物を復元するのは大変労力がかかると同時に、コストも日本の何倍もかかります。日本と同じように建て替えるために解体する様々な圧力もかかると思います。
そうした苦難を乗り越えて、各地で誕生している再生された日式建築が現代の新しい文化創造の拠点となっていること、それを行っている台湾の人たちの建築や文化に対する真摯な姿勢を聞けた一夜でした。

吹屋

週末に、備中地方を廻ってきました。
まず行ったのが弁柄で有名な吹屋地区。
朝早くて人のいない町並みが驚くほどきれいでした。

建築や焼物などの塗料に使われる弁柄や、銅の算出、加工、流通で栄えた街です。明治初期には倉敷と並ぶ繁栄をしていたようで、市になるのが倉敷が先か、吹屋が先かと言われていたようです。
日本は資源がない国だと教わってきましたが、埋蔵量と生産性の問題ではないかと思います。
金も銀もかつては大量に出ましたし、輸入しなくてはならなかった鉄も、砂鉄を利用した国産化にも成功。
4つのプレートがぶつかる地震国なので、地下深くの鉱物が採掘可能だったということでしょう。