アップルを創った怪物

この本は、もう一人のスティーブの自伝。
いわゆるスティーブ・ジョブズは言うまでもない英雄で、様々な場面で語られてきましたが、こちらのスティーブは、まるっきり正反対のキャラクターでありながら、多くの人達の尊敬を集めている人物。
二人がAppleをつくったのち、ウォズが外され、ジョブズがMacintoshをつくり紆余曲折を経て今に至っているという感じ。
Macintosh以前のAppleや、そこで創りだしたAppleI、AppleIIそしてパーソナルコンピューターを産んだエンジニアがこの愛すべきウォズでした。

長い時間をかけてインタビューすることでこの本をつくっていますから、物事を伝えようとする姿勢や語り口が、ウォズの人柄をうまく表現することに成功しています。
Appleが素晴らしい製品を生み出す土台を作ったのがウォズであると同時に、パーソナルコンピューターの土台をつくったのもウォズだった。
この最初の土台の部分をうまくやれるかどうかはその後のそのジャンルの成否に大きな影響は有ります。
例えば、日本の電気が東西で50Hzと60Hzになってる。このことが、東西の電力の融通を阻害する上に、今更一本化もできない。こういう最初に埋め込まれた根本的な欠陥は意外とあるもの。
しかし、コンピューターがパーソナルなものになる土台のところでウォズが果たした成果のお陰で、世界の人たちが、自由で手軽な道具として無くてはならない物になってる。

Appleが成功せず、大企業となっていなかったら
Appleに参加せず、hpで働きながらAppleIIの設計をしていたら
ウォズがエンジニアとして一線で仕事し続けていたかもしれない。
すると、もっと多くのわくわくするような発明がもたらされていたかもしれない。
そう思わせる本です。

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次元とは何か

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[amazon_image id=”4875024037″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]四次元の冒険 第2版—幾何学・宇宙・想像力[/amazon_image]

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20代の頃、SF作家のルディ・ラッカーが好きで、いくつかの本を読みました。
様々な科学の概念をテーマとして小説として仕上げるというスタイルでした。その中で、空間の次元をテーマにしたのが「四次元の冒険」です。
歴史的に様々な空間に関する考え方が提示されてきましたが、僕らが認知している三次元以外の別の次元がこの宇宙に存在してるんじゃないかという話は、非常に夢を感じます。

「次元とは何か」と言う本は、ニュートンのムックスタイルの本で、ビジュアル豊富で文章も少なく、簡潔に難解な概念を説明してるので、僕のような初心者には丁度いい。
超ひも理論や余剰次元もあわせて一連のものとして短時間で知ることができるというのもわかりやすい。

すごく勉強になったことは多いのですが、特に・・・
・3次元以外の次元では、物理の法則が変わってくる。→原子核の廻りを廻る電子が飛んでいってしまうので、他の次元では三次元の物質は崩壊する。
・どうやら重力の力が小さすぎる。→重力のみ他の次元に逃げて行ってるのではないか?
・10次元まであると想定すると、計算が矛盾なく成り立つ。
・4次元以上の余剰次元は、小さく折りたたまれてる?

異次元空間に行ってみるとどうなるのか?基本的には想像は不可能なはずですが、考えて見ることはありました。
どうやら無理のようですが、重力だけが異次元に行ってるらしい。
僕達のような高度な生命体には、目や鼻、耳、舌など様々なセンサーがあって外界の情報を手に入れていますが、そうしたセンサーを獲得していない原始的な生命体は、どの情報を得ているのでしょう?
なんとなく重力のような気がします。
感覚や感情にもつながるような気がしていますがどうなんでしょう?

Think Simple

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去年から続いているapple/jobs本を色々読んでみましたが、一番興味深い内容の本でした。
著者のケン・シーガルは、appleやNextでジョブズと共に仕事をした歴史の長い広告代理店のクリエイティブ・ディレクターで、ジョブズからも深い信頼を勝ち得ていた人物です。
社内の人材と違って、ジョブズと上下の関係ではなく、組織の外から共に仕事をするという関係でのエピソードが多く、ジョブズの発想や仕事の仕方を学ぶことができます。
特にApple再生の尖兵となったThink differentキャンペーンや、iMacのネーミングのエピソードは興味深いのですが、やはりジョブズのSimpleへの捉え方、仕事の進め方については面白かった。

実際、様々な企業からAppleのようなSimpleな広告作品を作って欲しいという依頼は多いそうです。
しかし、そのプロセスはまるでSimpleじゃない。
最終的な見た目をSimpleにしたところで、Simpleなプロダクトはできない。
ジョブズの禅への理解は若干疑わしいと思っていましたが、これを読んで、深い理解を感じました。

集団で仕事をする人、何らかのモノをつくる人、またはそれを学ぶ人にオススメの本です。

http://kensegall.com

スティーブ・ジョブズ

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遅ればせながらスティーブ・ジョブズIとIIを読みました。
ウォルター・アイザックソンの素晴らしいノンフィクション文学。翻訳もよかったと思います。
前半は、Appleに馴染みの深い世代なら断片的に知ってることばかりだとは思いますが、丹念な取材で、多くの関係者の証言で実際に起った事象を具体的に浮かび上がらせることに成功しています。

特に、Appleを設立するまでや、スカリーとの確執とApple退社のエピソードは貴重な内容でした。
NeXTの期間の記述が少ないことが残念でしたが、PIXARに関する記述は非常に面白かった。
何でもかんでも口を出すジョブズが、PIXARに関してはクリエイティブな面はそちらを尊重し、事業家としての役割のみ関与したというところ。恐らく、ノーチェックで書くことをウォルター・アイザックソンに依頼したのも、アイザックソンの作家性をそれだけ尊重しているということの現れだったと思います。

テクノロジーとアートを融合させるジャンルとしては、伝統的に建築がその役割を担ってきたと思いますが、ジョブズはコンピュータービジネスとアートを見事に融合させました。
もちろんジョブズは建築も好きだったようですが、この時代にこの場所にこの人物を神が遣わした・・・と言ってもいいと思います。
ミサイル制御技術から始まったシリコンバレーのテクノロジーと禅とカウンターカルチャーとボブディランの結晶がジョブズでありAppleだったと思います。

しかしあの性格のことは最初から最後まで、まさに主題のように書かれています。
最高の作品を作るためだけに、人を怒鳴り、翻弄し、引っ張っていった。それがよく伝わる内容となっています。ジョブズも草葉の陰で満足してると思います。
嘘偽りなく、誤魔化すことなく、等身大の恐るべき巨人を主観を排除して書ききった。なかなかできることじゃなかったと思います。

しかし、恐らく世界でも最も上司にしたくない人物でしょう。
ここまでの人いるかな?と思ったけどさすがにいない。
多少近い人は、、、、

フィリップ・トルシエ、味岡伸太郎、橋下徹、安藤忠雄、近藤等則・・・

あまり考えたくないですが、もしジョブズが日本に生まれてたら・・・

先ず、ジョブズのような人がのびのび活躍できるような社会をつくること。
そこが日本を再生させる上でも必要なことだと思いました。