iPhone5が発売されて

発売直後、大型電気店の横を通ったら、予約カウンターに大勢の人が並んでいました。
現物でも触ってみようかと思って入ってみたら、現物は無いとのこと。
世界中で猛烈に予約が入ってるようです。
現物を見てもないのに、大量に予約が入るというのは、appleという会社と、iPhoneという商品が、消費者から深い信頼を得てるという証明でしょう。なかなかできる事ではないと思います。

具体的な商品の性能のことはそれほど重大なことでもないと思いますが、何より皆が安堵したのは、ジョブズがいなくても、魅力的な商品を生み出してくれるであろうということ。
巨大な企業でありながら、個人の強烈な個性で運営されていただけに、当面の心配は無さそうです。

とはいいながら、幾つかのポイントは変わってきています。
ひとつは、開発中の情報漏洩。特に中国の部品メーカーあたりから漏れてるようですね。ジョブズ健在時であれば、国家機密漏洩並みの厳しい処分があったようですが、現在の体制では、多少緩んでいるのでしょうか。過剰な機密体制を改めるのであるなら、多くの人は歓迎するのではないでしょうか。
2つ目は、iPhone5に3つの機種があるということ。通信関連のチップの違いで3機種作り、通信方式の違いによって流通を分けてるようです。お陰で無駄なチップの搭載が無くなり、軽く、安くなったはずです。このあたりも、多くの人は合理的な判断だと思うはずです。
大きく目についたのはこの二点。
世界の社会基盤の一翼を担っている大企業として真当な体質に今後変わっていくのでしょう。
今後、革新的な商品を生み出すことができるかどうかは、数年ほど先の楽しみにしておきましょう。

Think Simple

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去年から続いているapple/jobs本を色々読んでみましたが、一番興味深い内容の本でした。
著者のケン・シーガルは、appleやNextでジョブズと共に仕事をした歴史の長い広告代理店のクリエイティブ・ディレクターで、ジョブズからも深い信頼を勝ち得ていた人物です。
社内の人材と違って、ジョブズと上下の関係ではなく、組織の外から共に仕事をするという関係でのエピソードが多く、ジョブズの発想や仕事の仕方を学ぶことができます。
特にApple再生の尖兵となったThink differentキャンペーンや、iMacのネーミングのエピソードは興味深いのですが、やはりジョブズのSimpleへの捉え方、仕事の進め方については面白かった。

実際、様々な企業からAppleのようなSimpleな広告作品を作って欲しいという依頼は多いそうです。
しかし、そのプロセスはまるでSimpleじゃない。
最終的な見た目をSimpleにしたところで、Simpleなプロダクトはできない。
ジョブズの禅への理解は若干疑わしいと思っていましたが、これを読んで、深い理解を感じました。

集団で仕事をする人、何らかのモノをつくる人、またはそれを学ぶ人にオススメの本です。

http://kensegall.com

スティーブ・ジョブズ

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遅ればせながらスティーブ・ジョブズIとIIを読みました。
ウォルター・アイザックソンの素晴らしいノンフィクション文学。翻訳もよかったと思います。
前半は、Appleに馴染みの深い世代なら断片的に知ってることばかりだとは思いますが、丹念な取材で、多くの関係者の証言で実際に起った事象を具体的に浮かび上がらせることに成功しています。

特に、Appleを設立するまでや、スカリーとの確執とApple退社のエピソードは貴重な内容でした。
NeXTの期間の記述が少ないことが残念でしたが、PIXARに関する記述は非常に面白かった。
何でもかんでも口を出すジョブズが、PIXARに関してはクリエイティブな面はそちらを尊重し、事業家としての役割のみ関与したというところ。恐らく、ノーチェックで書くことをウォルター・アイザックソンに依頼したのも、アイザックソンの作家性をそれだけ尊重しているということの現れだったと思います。

テクノロジーとアートを融合させるジャンルとしては、伝統的に建築がその役割を担ってきたと思いますが、ジョブズはコンピュータービジネスとアートを見事に融合させました。
もちろんジョブズは建築も好きだったようですが、この時代にこの場所にこの人物を神が遣わした・・・と言ってもいいと思います。
ミサイル制御技術から始まったシリコンバレーのテクノロジーと禅とカウンターカルチャーとボブディランの結晶がジョブズでありAppleだったと思います。

しかしあの性格のことは最初から最後まで、まさに主題のように書かれています。
最高の作品を作るためだけに、人を怒鳴り、翻弄し、引っ張っていった。それがよく伝わる内容となっています。ジョブズも草葉の陰で満足してると思います。
嘘偽りなく、誤魔化すことなく、等身大の恐るべき巨人を主観を排除して書ききった。なかなかできることじゃなかったと思います。

しかし、恐らく世界でも最も上司にしたくない人物でしょう。
ここまでの人いるかな?と思ったけどさすがにいない。
多少近い人は、、、、

フィリップ・トルシエ、味岡伸太郎、橋下徹、安藤忠雄、近藤等則・・・

あまり考えたくないですが、もしジョブズが日本に生まれてたら・・・

先ず、ジョブズのような人がのびのび活躍できるような社会をつくること。
そこが日本を再生させる上でも必要なことだと思いました。

グラミー賞とwinnyとsony

ジョブズがグラミー賞をもらったようです。
「音楽を世界中にデジタル配信することを可能にしたこと。同時に、数々のソフトウエアを開発し、ミュージシャンたちのレコーディングを安価で容易にしたことなどにより、音楽界に著しく貢献した」というのが受賞理由。
Appleがこのジャンルに進出する事は、ビートルズのアップルレコードとの協定で長く制限されていたことでした。
ジョブズのAppleの音楽に関するビジネスが、ビートルズのアップルレコードと混同する消費者がいるから商標権を侵害するということで。
それでAppleは音楽に関するビジネスに参入するときに多額の費用をアップルレコードに支払う事にしたそうです。
Appleは携帯音楽プレーヤーを皮切りに、ネットでの音楽販売や携帯電話などへの参入が続き、パソコンを超える収益を生む基幹事業となって今に至っています。
以前から言われているのは、Appleがやってきたことは、Appleが師匠として目指すべき存在として君臨してたSONYがすでにやってきたことだったということ。
パソコン、OS、携帯音楽プレイヤー、音楽の流通、携帯電話など。ほとんどがSONYが先輩と言っていい。
しかしSONYはAppleに負けてしまって、追いつける可能性もない。
既得権益を自らに内在してしまって新しいビジネスに参入できなかったということなのでしょう。

ジョブズがグラミー賞をもらった前日、winnyの開発者が訴えられていた裁判で、開発者が無罪となったというニュースが流れました。
かつて、インターネットが一般に普及したとき、個人と個人の間に直接情報交換する手段ができました。そのとき、そのツールを開発した技術者が告訴され、それをビジネスにしたジョブズがグラミー賞を取り、その既得権益に尻込みしたSONYは今のような会社となってしまったわけです。
新しい技術が開発され、若い人たちが熱意を持ってそこに飛び込んだとき、それをどうとらえるのか?そのときの対応が、結果に現れた事象だと思います。

新しい世代の動きを、現実の世界に調和するように既得権益を調整し、自分たちのビジネスに取り込んだAppleは企業の存在を大きくシフトしましたし、ジョブズは大きく賞賛されました。
新しい世代の動きを、既得権益への挑戦ととらえた行政や、古い企業は、裁判で負け、ビジネスで大きな敗北をしました。
こうしたことは、音楽の流通のようなことだけでなく、日常にありふれてるような事だと思います。目の前に現れる新しい現実、自分がそれにどう向き合うのか?
勇気とそれを裏付ける自信。自信を持つにふさわしい日常の行動。
その重要性を感じたニュースでした。