ガウディ×井上雄彦

ある縁があって諫早に行ってきました。
帰りにすこし時間が出来そうだったので、検索すると長崎県美術館で「建築家ガウディ×漫画家井上雄彦」展をやってるとのこと。
大好きな美術館ですし、ここの企画はすごく評価してるので行くことにしました。
ただ、それほど期待してたわけじゃない。
ガウディの関連作品はそれほど多くなさそうだったし、バルセロナは一週間ほど滞在して、ガウディ見まくったこともあったので充足感はあった。
井上さんは大好きだけど展示品の少なさを補うつもりでは?という疑いも無きにしもあらずだった。
その時は展覧会のタイトルしか見てなかったし。

諫早から若手大工一家と一緒に美術館に到着。
ガウディの顔のイラストでもう期待度100%
ガウディの学生時代の作品から主要作品の関連資料、最後はサグラダ・ファミリアに至る。
井上さんは、ガウディの生涯を漫画で描く。
和紙に筆。 美術ではないけど、漫画としての絵の力。
ストーリーを描くメディアとして最大限の力を発揮。

後で図録を読んだら、井上さんは一ヶ月バルセロナに滞在し、カサ・ミラにアトリエを構えて制作をしたらしい。

とんでもない才能の建築家と、それをリスペクトする漫画家のコラボレーション。
映画を見終わったような気分になった展覧会でした。
企画した人。ありがとう。面白い仕事でした。

長崎の後は、兵庫、せんだいへと巡回します。

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竣工10周年

昨日、竣工して丁度10年になるお施主様にお招きいただいて、久しぶりに訪問してきました。
向かいの島との間に広がる穏やかな海は、変わらない魅力に満ち溢れていました。
木造平屋で、軒を低く長くして雨樋を作らないつくりでしたが、よく手入れされているため、建物の傷みもなく、とても綺麗に維持されていました。
お施主さんが、この家が、時間が経つにつれて良くなることが素晴らしいとおっしゃってることが心に残りました。
ご家族の生活が充実しているからこそそう思えると思うのですが、やはり、10年前にこの場所と向き合って生み出した空間は、一つ一つの判断が間違っていなかったと、改めて感じた時間でした。

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伊予灘地震

先日、深夜に伊予灘地震が発生しました。
M6.2で震源の深さは78KM
広島は震度4で、最大震度は5弱といったところです。
廻りの方々の反応は、、、びっくりした!といった程度で、大きなトラブルもなく一安心。

この地震は、H19年の想定では、30年以内に40%の確率で起こると言われていたものです。
2001年の芸予地震が、50年ごとに繰り返し起こった地震よりもMが小さかったので、近い将来、伊予灘で同規模の地震が起こるのではないか?
という予想でした。

H19年の広島県地震被害想定調査報告書では、M7.25で最大震度6弱
恐るべきは、、、全壊5800棟、半壊37000棟、死者170人、負傷者37000人、避難者12万人という想定の内容。
揺れた瞬間、南海地震か、伊予灘か?と思いましたが、伊予灘との速報が入った時、防災関係者はドキッとしたと思います。
想定よりも小さくてほんとによかった。
瀬戸内海西部で起こると想定される地震は、岩国、五日市、己斐の各断層によるものですが、確率は2%以下のもの。
とりあえず宿題はこなしたと見るべきか?
ただ、過去の伊予灘は、南海地震と同時期に起こったものもありますし、連続して起こったこともあります。
緊張感を維持しつつ今後も暮らしていくべきであることは、言うまでもないとは思います。
特に、南海地震が近づいているとの研究者の発表もいくつかあります。
単なる地震による揺れの被害だけでなく、社会的混乱も含めた準備をしておく必要はあると思います。

広島県防災概要版

広島県防災概要版3

ところで、広島県地震被害想定調査報告書(H25.10)が新たに作られました。
最大限の被害を想定した報告書ですので、今回の伊予灘地震では津波が発生し、数千人規模の死者が出るとの予想です。

こうした防災を目的とした予想は、把握しておく必要があると思いますが、必ずそうなると前提条件として用いるには不向きなように思います。

日本の輸出政策

アメリカは、日本の内需をなんとか取り込みたいようで、TPPに入ることを強要してるようです。
反対派はシンプルな主張で勇ましいですが、賛成派は誰もがモゴモゴした感じで主張もはっきりしない傾向にあります。
TPPに入るかどうかは別として、この円高と、生産性の低下、人件費の高止まり、中国や韓国の追い上げ(追い越し?)も考えると、精密な工業製品を純国産で製造し、外国でバンバン売るという状況は今後は考えにくいでしょう。
似た様な体質のアメリカは、映画やテレビドラマ、特許や独占で固めたウェブを使ったサービスなど、非物質的な輸出で稼いでるようです。
日本は昔からサブカルチャーが得意と言われてきましたが、マイナーだからサブカルチャーなわけで、政府と二人三脚で売り込むところまでは行っていません。

先日、トルコで大きな地震がありました。トルコは元々ウイグルと同族で、古代にはひょっとしたら日本人とも何らかの血の繋がりがあるかもしれない、そういう親密な関係を更に持てる民族です。
何かしてあげたい気持ちはありますが、しかし地震は予防が一番の対策です。地震に強い建築を造ること。これが不幸を最小化する最大の技術です。
同じアジアでは、パキスタンやイラン、アフガニスタンあたりの地域も巨大地震が起っています。
中国でもインドネシアでも大きな地震がありました。
巨大地震の危険性がある地域であっても、地震に対する対策ができている途上国は皆無に近い。
キアロスタミの映画にもなった1990年のイラン地震は3万人もの犠牲者が出ましたが、そのほとんどは日干しレンガの家の倒壊による圧死でした。
途上国では、RCの建物でも、細い柱梁をつくって、その間に煉瓦を積んで壁を作る工法です。
これが非常に地震に弱い。
コストの問題もあると思いますが、耐震性の研究や技術の開発や普及がそもそも不十分じゃないかと思います。
恐らく、先進国のコンサルタントやゼネコンが関与する政府の建物はきっちりと作ってると思いますが、庶民が特に基準も規制もなくつくるものは、手作りの延長のようにも見えます。
こうした耐震技術の普及が未発達な国へ、耐震技術を輸出するというのは、建築の業界の今後の仕事とならないかな。

その国や地方に応じた地震の研究、それを元にした耐震基準の策定、建築規制の政策の立案や、行政を実施するアドバイス。
そして具体的な構造設計や計算プログラムのローカライズ、施工技術の研究と普及。
単品では機能しないので一連の技術をパッケージとして、ODAも使ってその国に長期的に根付くような技術移転をすることができれば、日本の大きな強みになるでしょう。他の追従を許さない輸出商品になりそうな気がします。
もちろん他のジャンルでもおなじでしょう。潤沢な内需で培ったサービスは、独自の商品になり得るように思います。

かつては、島国である日本。無限の広がりを持つ大陸の国々。でした。
しかし、世界は短時間で結ばれ、大陸は島国になりつつあります。逆に島国だった日本は大陸とコネクトされ、地球が一つの領域になっています。
日本は大陸のように。大陸は世界のように。
そうなることは必然となります。
日本がグローバルな波に飲まれると同時に、世界は日本のきめ細やかな文化を求めている。
これから先は、そういう動きが加速しそうな気がしています。