久々のライアルワトソンの本です。白い呪術師はてっきりワトソン本人のことかと思ったら、別の人物のことでした。
エイドリアン・ボーシャはイギリスで生まれ、親の仕事の関係で南アフリカに引っ越します。
16才の時、ポケットナイフと一袋の塩(物々交換用)を持ってブッシュに徒歩で入っていきます。
自力で獲得したブッシュでの生活術は強烈です。
ライオンが捕まえたシマウマを奪うために5頭のライオンを脅したり(4匹までは追っ払ったようです)、大蛇と格闘したり、、、
しかし、その結果、アフリカの部族社会から一目置かれる存在となって、正式に呪術師となります。白人では史上初でしょう。
おかげで、数々のアフリカの伝統や秘密、知恵や文化を知ることとなります。
それは、従来の学説を大きく変えるものだったし、アフリカ史だけでなく人類の歴史そのもののとらえ方にも大きな影響があったようです。
それ以前に、自分たち先進国の人間の目線と、アフリカの伝統的な部族社会の目線がはじめて同じ地平に並んだというあたりが大きかったかもしれない。
アフリカでは、人間と精霊が同じ場所にいるようです。何事が起こっても精霊の意志がその背景にあるということのようです。呪術師は、その精霊と対話するという事が仕事のようです。
僕たち先進国の人間は、近代科学を学習していますので、それをリアリティのある事実として受け入れるには相当な抵抗がありますが、ボーシャの目で書かれたこの本を読むと、その社会で完結している価値観の体系がおぼろげに見えてきます。
ボーシャは寝床の確保(野宿ですが)にずいぶん気を遣ったようです。
乾いた河床で寝てたら夜中に突然洪水が起こって流されたり、サソリに襲われて危うく失明しそうになったり。ボーシャの体温を求めて寄ってくる動物に寝返りを打たないように動かないで眠る訓練をしたようです。
朝起きたら隣に毒蛇が寝てたケースも何度もあったようですから。
そうして「感じ」のいい場所を直感で感じられるようになったようです。まさに野生の勘ですね。
その極意は、、、自分の好みで選ぶのではなく、場所から好かれるかどうかが重要だということです。
場所(place)=精霊ということかもしれません。
土地に建築をつくるということは、「感じ」のいい場所をつくるということが目標ですが、自分(住み手)が好かれる土地を選ぶのはすごく大変だと思います。
設計を開始するときには先ず土地と対話することから始めるのですが、自分がやりたいことを土地(建築)に押しつけるのではなく、そこにつくる建築が場所から好かれるものとなるようにするという意識も必要だろう。
騒々しい日本では、土地が語りかけてくれるまでには時間がかかると思うけど。
ちなみにINPLACEはそういう意味でつけた名前です。