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場々雑記 その1
2000年6月5日 

したの公園にて


いつもゴミが散乱している。犬や猫の糞が臭い。草がぼうぼうと繁っている。汚くて臭くて荒れている場所は、より汚され蔑まれ、より荒れ果てていく。

ちびっこひろばの看板を掲げる市の管轄の公園だから、時にゴミは処分され、除草剤が撒かれたりもする。いっとき手を入れられて、散髪帰りのようなすーすーした景色が、もとのどんよりとくすんだ状態にかえってしまうのはわけない。
ごみをすてないで、といううすっぺらな看板が何枚もフェンスに引っかけられ、その下に山のように積まれた弁当のパッケージや空き缶がせせら笑う光景は、見ているとむなしい気持ちになる。

Tにせがまれてあそびにいく公園の中では、最低クラスなのである。子供もほとんどいない。仕事中油を売りにくる青年や、たむろっている高校生や、なんとなく見てはいけないような人達が集まってくる。した(下)の公園はちょっとねえ、という感じだったのだ。

ひとつき前ぐらいだろうか、このあいだ行ったときにそれはすでに始められていた。
彼女は何人か幼児を引き連れ、手にはポリ袋と火ばさみを持って公園にやってきた。子供達はすぐに勝手に遊び始め、彼女はすぐに落ちているタバコの吸殻を拾い始めたのである。ゴミを集め砂場の猫の糞をチェックし、草取りをする。すごいなえらいなと思って、何かきっかけをつかもうとちらちら見てみるのだが、すきがない。何か怒りをぶつけるかのごとく眉をひそめ、とりつかれたかのごとく作業を進める。「ごくろうさまです」なんて言葉をかけたら、思いきり滑りそうだ。よく見れば、草取りされた箇所が部分的にある。今日だけではないのだろうか。そういう行為はちょっと気恥ずかしくてなんて雰囲気が全然ないものだから、こちらのほうが居場所のない心持ちでそそくさと帰ってきた。

そして今日、久しぶりにまたベンチに腰掛けてのんびり茶でも飲んでいると、来た来た。
ゴミ袋も火ばさみも持っている。今日の公園はなんか綺麗で、また除草剤かと思っていた矢先なのである。もしや彼女がこの状態に?これは一声かけねば。
ベンチから立ち上がり「ごくろうさまです」と歩み寄った。

毎日朝7時と夕方と掃除しているのだそうだ。公園のすぐ前のマンション住まいで、あまりのひどい状態に立ちあがったという。綺麗にするとさすがにごみを捨てにくくなるらしく随分減ったそうだ。臭いにおいもしなくなったし、除草剤でかぶれることもなくなったし。これからの季節、暴走族が来てまた汚されると思うけど、掃除すれば綺麗になるからと。「掃除すれば綺麗にはなるから」と。けなげだ。
以前の状態の公園を嫌がったり、避けたり、意見だけすることは簡単にできるけれど、行動で状況を変えること、なかなかできない。それも継続させているのだ。
場は変わりはじめている。
気持ちのいい公園、くつろげる場所、お気に入りのベンチを享受すること、見つけることには意識はいく。そうではない投げ捨てられたような場を、手をかけることで変えていくこと。根気よくこしらえること。
人生の中でそんなふうに場とかかわり合うことが、これから先あるだろうか。婆さんになっても文句だけぶうたれているんじゃないだろうか。

水を撒いてどろんこ遊びをしている子供たちの景色が、なんだか美しく輝いているように見えたのである。

 

 


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