林家雑記 その2
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朝の光が部屋に差し込み、Kは眩しくて目が覚めてしまうという。この部屋の窓にはカーテンがない。布が垂れている様子が嫌いなのだというKの選択である。ひらひらしたものが嫌いなのか、閉所恐怖症なのか、ただのめんどくさがりか。網戸も雨戸もブラインドもない、古くなってがたついているサッシの窓は、朝の光だけでなく、夜になれば小さな虫もたくさん招き入れる。朝も昼も夜も、無防備なその窓が気になって仕方ない。通りに面しているのでもなく、雄大な景色が広がるのでもない、ただとなりの家の壁が見えているだけだ。唯そこが外に開かれているせいで、気になってついつい目がいくのだろう。何がそこに映っているのか気になるし、こちら側が映し出されているとも限らない。それとも、何かと、誰かと、目の合う瞬間を先送りにしながら、窓の向こうの何かを待ち続けているのかもしれない。 |
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