風たちぬ

昨日、風立ちぬを観てきました。
僕も飛行機大好き少年だったので、同じ浸透圧を感じながらの鑑賞でした。
堀越さんのことは、小学生の頃読み漁った飛行機の本で知り、最も尊敬するエンジニアだったので、活き活きと描いてくれて嬉しかった。アーサーランサムのティモシィっぽかったけど偶然かな。
宮崎さんは零戦の設計には触れなかったが、それに至るまでを丁寧に描くことで、物語を成り立たせている。

今日、宮崎さんは6度目の引退宣言をしたけど、描くべき自分の内面の葛藤を描き切ったという感じか。
ポニョではおっかなかったお母さんとの関係。
風立ちぬでは、飛行機好きであることに加えて、実家が戦時中、陸軍の軍用機工場であったこと。
政治的信条と、家業との葛藤は常にあったと思います。
複雑な内面の葛藤を上手く作品にしたと思います。
「戦争の道具を作った人」の映画を作ることに、奥様やスタッフをはじめ多くの人から非難めいた質問を受けたようです。堀越=父だったのではないか。ひょっとすると堀越=宮崎さん自身だったのかもしれない。
肯定もせず、否定もせず、子供っぽさに逃げることなく。寡黙に淡々と仕事と家庭を愛する。人生を貫くその姿勢が、その非難めいた質問への答えだったのでしょう。

映画の技術としては、今回は背景の美しさや臨場感に驚きました。
丁度関東大震災が起こった日だったこともあり、東京の災害のシーンは今でも深く印象に残っています。
東京は、東北の震災の4倍の被害者をうみ、長崎の原爆以上の空襲の被害者をうんだ悲劇の町。そうした悲劇から何度も立ち上がったことを先ず物語の背景に据えたことに、宮崎さんのメッセージの重さを感じました。

映画とは関係ありませんが、堀越さんの零戦の設計で最も素晴らしい点。
高速性と旋回性を両立させたこと。
当時は、二律背反だったのでどちらかを選ぶしかなかった、
堀越さんは、主翼を少し上向きの角度で取り付ける事で、不可能を可能にしました。
風立ちぬでは、零戦の前に設計した96式艦戦のプロトタイプの試験飛行のシーンがありました。
この機は、主翼が下に折れ曲がっている逆ガル式。この折れ曲がっている下の折れ点を胴体にくっつければ、零戦のように上に傾いた主翼になります。試運転した96式艦戦は、試作2号機から逆ガルをあきらめて通常の主翼に戻ります。逆ガルにしたかったメリットを次の零戦にうまく取り入れたということかもしれません。
その逆ガル式の戦闘機は、ドイツユーカーンス社の格納庫で眺めるシーンがあります。
飛行機目線でこの映画を観ると、逆ガル式がかなり重要である事がわかります。

mainVisual

[amazon_image id=”4041105102″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]風立ちぬビジュアルガイド (アニメ関係単行本)[/amazon_image]

[amazon_image id=”4101004021″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)[/amazon_image]

コメントする

CAPTCHA