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ぷち日々雑記

2000年6月 

シスレー展

印象派になんてひっかかることあまりなかったのに、つい足を伸ばしてしまったひろしま美術館。
いましたいました妙齢のご婦人方。わんさわんさと化粧品のにおいとちょっとよそ行きのお洋服。おほほほうふふふこの後はフランス料理のランチよね。
気を取り直して、あら油絵の具がなんだか新鮮。色がいきいきしてる。空なんだ。画面の半分くらい空がひろがってる。空を見て空を描く。空気を描くこと。
鼻先をかすめる風、遠くで聞こえる鳥の声や人々のざわめき、永遠の水の流れ、変わりゆく陽の光。この風景をこの世界をつかむこと。戸外にて絵を描くことが、この時代なんて楽しく刺激的だったろう。印象派の画家の気持ちがちょっとわかる。
これは少し年寄りになった気分だ。年寄りは風景を眺めてるけど、若者は風景そのものだもんなあ。
シスレーは、印象派の中では名声や富に縁が無く、地味で誠実、いい人って感じの位置づけらしい。後半は、なんだかちょっと荒れてる。初期の頃の丁寧で、もどかしいような初々しいような感じが、シスレーその人なんだろうと思う。

*シスレー展
大地と光とセーヌを描くー水辺の印象派
2000.5.27-7.2
ひろしま美術館

 

 

佐野洋子「ふつうがえらい」

朝日新聞で連載されている「あれも嫌いこれも好き」を最近楽しみにしていて、そうそううちに一冊あったようなと本棚から引きずり出して、空いた時間にちょこちょこ読んだ。面白いエッセイを書く人は、その人となり、そのまなざし、その生活自体が面白い。
「そして自慢するわけだけど、私の手紙すごく面白いんだって。毎日毎日欲しいくらい面白いんだって。皆んな言うもん。」彼女は用事など何もない手紙を誰彼に書くことが好きなのだ。
「手紙を書く気分があって書くあてがある時、私は元気であると自分で判断する。」ふむふむそうそう。
「私は忘れていたのだが、「あなた、覚えている。[私あの男絶対に落としてみせる、手紙で]って言ったのよ」と友達に言われて仰天した。私本当に、その男落としていま一緒に住んでいるのである。」きゃあ。である。あの谷川俊太郎氏が落ちちゃったのだ。
「好きだって一言も書かなかった。」そうでしょうそうでしょう。すごいなあ。びっくりだなあ。
夕暮れ時のドーナツ屋で、思わず場違いな興奮をしてしまったのであった。えらいふつうな話だ。

 

ALL ABOUT MY MOTHER

そうじゃないかと思っていたのだが、スペイン人は母と息子の二つの人種しかいない。男と女の関係とは、母性と幼心が強く引き合っている状態をいうのだ。
ある男性が目覚めてしまって、おっぱいをつくって女性の格好をして、そして男にも女にもモテモテ。性差を越えて愛に生きるのだが、当然様々な形でまわりの人間には、不幸な結果も起きてくる。これは、それでも強く生きていく女達のドラマなのである。男のドラマじゃないのよね。
なのだが問題はこの男も女も愛する存在。これこそ母性と幼児性が合体したみたいな生物そのものなのだ。とっても欲張りで、ある意味純粋に愛情の塊というか。愛に溢れているからまわりの人間はつい引き寄せられてしまう。
それで監督のペドロ アルモドバルが、きっとそういうタイプに違いない。だからこういう女達の映画が撮れるのよ。そうなのよ。
当たり前に女性性を生きていたらこんなの撮れない。
女性という性を生まれながらに持っているということ。欲しくて自らの意志で女という生き方をも手に入れるということ。この問題については要熟考。

*オール アバウト マイ マザー
2000.6.3-7.?
サロンシネマ

 

 

 

 


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