もう10年以上このお店の存在を知りつつも、東京は遠く私の中ではまぼろしのようになっていたのでした。でも知っているようで知らないわけで、あー地下にあるんだと思いながら階段を下り、落ち着いた光が灯っている店の扉を開けると、いきなりそこにはミシン台が並び、女性3人が縫い物仕事をしていて、えーそうだったの知らなかったショックだーっていきなりがつんときました。お店のスタッフが縫い物をしてそれを売っているのは知っていましたが、入り口横にミシンがあるなんて思っても見なかった。そういう店もありかーなんかやられちゃったなあとそれでも気を取り直して、店内をゆっくりとまわり、展示に使ってる台とか、照明とかもじろじろ見ちゃう。ぐるりと2回ぐらいした後で、藤原千鶴さんの室内履きを物色。これはずっと買おうと思っていたもの。サイズのことなど尋ねるためにお店の人に声をかけ、再度の来店が難しいのでここにある中から決める。黒い帆布地のストラップのあるタイプ。嬉しいなあ.。「お茶を飲んで休憩していきます」って言うと「広島からおいでですか?」と。「え?私広島って話しましたっけ?」「いえ、沖さんのバッグを持っていらっしゃるから」そうです。そうです。これ沖さんのバッグです。沖さんはZAKKAで働いていたことがあるんですよね。なんて、本当は気付いてくれないかな、なんて思っていたのですが…。縫い物の手を休めて、ていねいにミルクティーを入れてくれるスタッフの女の子、テーブルはどういうふうにつくってあるか、裏方の様子、ZAKKAという店の姿勢がびしびし伝わってくる空気の中でしばし静寂の時。芯がしっかり通っているというか、骨太というか、いわゆる巷のちゃらちゃらした雑貨屋とは一線を画し、なおZAKKAという名前を掲げる。格好いい。「又来ます。」と頭を下げ、いい気持ちで店を出て、気付いたのは数日後。あの感じよく応対してくれた女性が、あのあの吉村さんだったのだろうか。スタッフ頭の人かなとぼんやりと思いながら話していたのだ私は。雑誌をチェックして多分そうだろうと。あー、これがまたショック。あんなふうにさりげない居住まい、気安く親しげでいながらあの店の緊張感。いわゆる自己表現としての自分の店を開く人は、もっと店主店主した空気を醸し出していることが多いのだ。あまりにも自然で、なんだか昔から知っているような人に見えたもんなあ。ZAKKAという店体験は、非常にポイントの高いものでした。(番号が入っていました。2415番)
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