広島県立美術館 9/2〜10/14
ちょっと意外だったカルダーおじさん。会場入ってすぐのビデオを観て、いきなり納得させられてしまうなんて。それはちっちゃくて薄汚れたようなカルダー作の人形が、彼の太い指で動かされてサーカスの舞台を演じるビデオ。雑だけどサーカスの人間や動物の動きそのものがかたちづくられていて、こんなふうに動きが表現できるなんてすごいことだと思ったのだ。針金細工のような簡単な物なのに、それは動くとまったく馬になるのだ。奥さんと二人でちまちまとちっちゃな舞台でサーカスを演じ、観客は楽しそうに笑っている。アートとは、なーんてお題目はここには存在しない。そうちまちまとほんとに日常的にエンドレスにカルダーおじさんは物を作っていたのだ。持っている服は赤いネルのシャツを二枚。家にある物という物はほとんどカルダーの手作り。(フライ返しなんかほしい。)アトリエも、作品や作品以前の物でぐしゃぐしゃ。もうどうしようもなく芸術の中にいる人なのだ。そんなカルダーおじさんを知ってからあの優雅に空間を浮遊する作品群を観ると、親近感がぐっと増す。ちょっと粗い仕上げも、らしくていいなんて思う。でもここにあるのはやっぱり抜群のバランス感覚で、たぶん小学校の図工の時間でモビールを作ろうなんていう課題を経験しているし、お家にかえって作ってみようかと思うのだが、きっとこんなふうにはできないのだ。それにしてもあの軽やかな作品から、華奢な繊細な作家のイメージがあったのだが、思いっきり気持ちよくひっくり返されたな。満足。
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